高齢者の慢性便秘症
~早期治療で介護負担も軽減(横浜市立大学付属病院 中島淳主任教授)~
十分かつ快適に排便できないことが長期間続く慢性便秘症。高齢者の健康状態や自尊心を考慮しつつ、介護する人の負担を軽減する方策が求められる。横浜市立大学付属病院(横浜市)肝胆膵(かんたんすい)消化器病学の中島淳主任教授に話を聞いた。
いきみで血圧上昇も
◇いきみで血圧が急上昇
慢性便秘症の特徴には▽排便が週3回未満▽強くいきまないと便が出ない▽残便感がある▽1度に出せず日に何度もトイレに行く―がある。70歳以降に有病率(ある一時点の病気の人の割合)が増加する。その原因として、腸の内容物を先に押し出すぜん動運動や便排出機能が加齢で低下したり、生活環境が変化したりすることなどがある。
高齢者の便秘は、ない人に比べ、脳卒中などの心血管疾患の発症や死亡リスクが高く、慢性腎臓病やパーキンソン病、認知症などの合併症につながる可能性がある。排便時のいきみで血圧が上昇しやすく、排便中に心不全が発生して死亡するケースもあるといい、適切な排便管理が必要だ。
「動脈硬化が進んでいる高齢者は、少しいきんだだけで血圧が急激に上がる人もいます。3日に1回しか便が出なくなったり、トイレにいる時間が長くなったりしたら、早めに医療機関を受診しましょう」
◇バナナ型の便に
治療は便の硬さや形状を観察し、適切な薬剤の使用と用量を調整しながら進める。
「医師は、パーキンソン病の治療薬や整形外科で処方される痛み止めによる薬剤性便秘に注意しながら、患者の持病や特性に応じて薬を調整します。目指すのは臭いが少なく、いきまずにすっと出るバナナ型の便です」
決まった時間にトイレに行くことも重要だ。便意が感じにくい人でも、朝食後に毎日トイレに行く習慣をつけると予防につながる。「薬局などでもらえる『便秘手帳』を活用して、排便回数や時間、形状を介護者がメモしておくといいでしょう」
おむつを使用している場合は、本人だけでなく、介護者の負担軽減も視野に入れた排便管理が大切になる。柔らか過ぎる便はおむつ交換の手間が増え、皮膚トラブルの原因になる場合もある。中島主任教授は「排便は人間の尊厳に関わります。要介護者と介護者双方の負担を最小限に抑えるためにも、早めのケアを心掛けましょう」と呼び掛ける。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/12/18 05:00)
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