国立大学法人千葉大学
―都市部・郊外・大型モール・女性・高齢者で特に多い歩数増加―
国立大学法人千葉大学予防医学センターとイオンモール株式会社は、スマートフォンのアプリケーションを活用したウォーキングプログラムへの参加が歩数の増減に関わるかを検証しました。
2021年の1年間に取得した、約21万人の約2,300万日分のビッグデータを分析しました。結果として、プログラムの参加が約1,200歩の歩数増加と関連し、特に都市部、郊外、大型モール、女性、高齢者で歩数が多く増加する可能性が示されました。ショッピングモールの施設とスマートフォンアプリによるポイント付与を活用した歩行プログラムへの参加が、日常生活における歩行を促進することが期待されます。
本研究結果は、米国医師会の国際医学雑誌JAMA Network Openに2024年1月30日(現地時間)に掲載されました。
研究の成果
2021年の1年間(1月1日~12月31日)にスマートフォンアプリ(注1)に記録された日本全国の217,344名の
ユーザーの23,638,110日分のデータを性別、年齢による歩数の差異を調整して解析しました。その結果、アプリを使用し、ショッピングモール(注2)でのウォーキングプログラム(注3)に参加した日(プログラム参加日)は、実施していない日と比較して1日の合計歩数が
1,219歩多いことが分かりました。
またプログラム参加日には、以下の傾向がありました。
・
都市部、郊外のモール(注 4) で歩数増加
都市部
+1,433 歩、郊外
+1,403 歩、地方部
+1,130 歩(図1)
・
大型モール(注 5) で歩数増加
大型モール
+1,422 歩、小型モール
+1,059 歩(図2)
・
女性、高齢者(注 6) で歩数増加
プログラム参加日の歩数は女性が男性よりも
+728 歩、高齢者 が若年者よりも +
228 歩
今後の発展・展望:
これまでの国内外の先行研究では、身体活動は様々な疾患の予防に効果的であることが報告されています。ショッピングモールに来店しウォーキングプログラムに参加するなどの活動で歩数を増加することは、健康づくりに役立つ可能性があります。
国立大学法人千葉大学予防医学センターとイオンモール株式会社は、イオンモールが取り組むイオンモールウォーキングに関して、地域住民の健康やコミュニティに及ぼす影響を明らかにすることを目的に、「イオンモールウォーキングと健康」を題材に共同研究(注7)を実施しています。今後も、環境や人の行動と歩数の関係を調査・分析し、地域住民の健康保持・増進に寄与する環境や行動に関する知見を明らかにしていきます。
※本研究は、OPERA(注8)採択事業「ゼロ次予防(注9)戦略によるWell Active Community (WACo) のデザイン・評価技術の創出と社会実装」の一環として実施されました。
注釈:
注1 イオンモールアプリ
注2 イオンモール136店舗
注3 モール内で1日1,000歩、歩くと抽選でポイントが得られるくじが引けるプログラム
注4 モールの所在地の市区町村人口で分類(20万人未満を地方部、20万人以上50万人未満を郊外、50万人超を都市部)
注5 モールの総賃貸面積の中央値で2区分(60,000平方メートル 以上を大型モール、60,000平方メートル 未満を小型モール)
注6 18歳以上65歳未満を若年者、65歳以上を高齢者と区分
注7 以前の共同研究では、プログラム実施日と非実施日の日歩数をそれぞれ3日以上保有する100,991名を対象に調査した結果、非実施日に比べ、実施日は平均歩数が1,306歩多いことを明らかにしました(2022年8月時点)。今回、性別や年齢による差異を統計学的に調整したデータ分析を実施したところ、プログラム参加日は平均歩数が1,219歩多いという結果になりました。
注8 OPERA: 科学技術振興機構(JST)が公募する産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム事業
注9 ゼロ次予防: 疾病につながる社会経済的、環境的、行動的要因を予防すること
論文情報
タイトル:A Smartphone-Based Shopping Mall Walking Program and Daily Walking Steps
著者:Yoko Matsuoka, Hiroaki Yoshida, Masamichi Hanazato.
雑誌名: JAMA Network Open
DOI:10.1001/jamanetworkopen.2023.53957
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(2024/01/31 14:00)
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