【研究報告】ヒトiPS細胞を用いた抗肥満効果をもつ活性化因子スクリーニング系を開発 肥満タイプ別iPS細胞から褐色脂肪細胞の分化に成功
株式会社ディーエイチシー
~第23回日本再生医療学会総会にて研究成果を発表~
株式会社ディーエイチシー(本社:東京都港区、代表取締役社長:宮崎緑、以下:DHC)は、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 血液・生体システム解析学分野(所在地:東京都文京区、准教授:西尾美和子)との共同成果を、2024年3月21日(木)~23日(土)に開催されました第23回日本再生医療学会総会(新潟)において、以下のタイトルで口頭発表をいたしました。
『ヒトiPS細胞由来褐色脂肪細胞の活性化作用因子スクリーニング系の開発』
発表日:3月22日(金)(演題番号:O-18-4) 会場:朱鷺メッセ(新潟)
【発表概要】
肥満は生活習慣病のリスクファクターであり、特にメタボリック症候群の主な原因です。近年、脂肪燃焼作用をもつ「褐色脂肪細胞(Brown Adipocyte; BA) ※1」は病的肥満に対する新たな治療標的として注目されています。そこで、本研究では、「日本人に多い肥満関連遺伝子タイプ※2」を背景として当社で樹立した遺伝子タイプ別のiPS細胞※3を用い、東京医科歯科大学独自のBA分化誘導技術を応用することで、抗肥満効果をもつBA活性化作用因子のスクリーニング系の開発に成功いたしました。
【研究結果】
専用プレートを用いた培養法では、辺縁整の細胞凝集体(スフィア) ※4が得られました(図1, 写真左)。このスフィアについて、脂肪滴を特異的に染色したところ、細胞の核周囲にはBA特異的な多数の小さな脂肪滴が観察されました(図1, 写真右)。
図1. iPS細胞から分化させた褐色脂肪細胞
そこで、BA特異的遺伝子であるUCP1※5の遺伝子発現を調べたところ、未分化状態と比べて高い発現上昇が確認できました。以上のことから、安定的かつ高効率なiPS細胞由来BAの作製に成功しました。
【今後の展望】
今後はヒトBAを対象とした抗肥満効果をもつ活性化因子のスクリーニングと解析を進めていく予定です(図2)。
図2. BA活性化因子スクリーニングの流れ
遺伝子タイプ別に樹立した細胞をターゲットとした機能性食品成分の抗肥満効果を明らかにすることで、経口摂取を前提とした健康食品やサプリメント等の改良や、オーダーメイドサプリメント等の日本人の体質に沿ったダイエット対策製品の新規開発が期待できます。
<用語説明>
*1:褐色脂肪細胞 (Brown Adipocyte; BA)
ヒトの鎖骨上部や傍脊椎部に分布し、脂肪を燃焼し熱を産生する働きを担っています。
*2:日本人に多い肥満関連遺伝子タイプ
肥満関連遺伝子として、ベータ3アドレナリン受容体遺伝子多型(糖質代謝不全型)、脱共役タンパク質1遺伝子多型(脂質代謝不全型)、ベータ2アドレナリン受容体遺伝子多型(タンパク質代謝促進型)の3種類が知られています。これらの遺伝子に変異がない場合は、生活習慣起因型としています。
*3:iPS細胞 (induced pluripotent stem cell, 人工多能性幹細胞)
人工的に作成されたあらゆる生体組織に成長できる細胞です。京都大学の山中伸弥教授らが2006年に世界で初めてiPS細胞の作製に成功し、2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。
*4:辺縁整の細胞凝集体 (スフィア)
一般的なシャーレでの細胞培養とは異なり、3次元的に培養した細胞の塊の形状のことです。縁が整った球状になっていることを示しています。
*5:UCP1 (Uncoupling protein 1)
日本語で脱共役タンパク質1と呼ばれており、褐色脂肪細胞の分化マーカーの一つです。褐色脂肪細胞のミトコンドリアに局在し、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化を脱共役させる活性を持っています。
DHCはお客様に安全かつ確かな効果を感じられる商品を提供できるよう、より高度な科学的根拠に基づいた研究開発に日々取り組んでいます。お客様の快適な毎日をサポートするため、今後も機能性を有した付加価値の高い製品の開発に努めてまいります。
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~第23回日本再生医療学会総会にて研究成果を発表~
株式会社ディーエイチシー(本社:東京都港区、代表取締役社長:宮崎緑、以下:DHC)は、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 血液・生体システム解析学分野(所在地:東京都文京区、准教授:西尾美和子)との共同成果を、2024年3月21日(木)~23日(土)に開催されました第23回日本再生医療学会総会(新潟)において、以下のタイトルで口頭発表をいたしました。
『ヒトiPS細胞由来褐色脂肪細胞の活性化作用因子スクリーニング系の開発』
発表日:3月22日(金)(演題番号:O-18-4) 会場:朱鷺メッセ(新潟)
【発表概要】
肥満は生活習慣病のリスクファクターであり、特にメタボリック症候群の主な原因です。近年、脂肪燃焼作用をもつ「褐色脂肪細胞(Brown Adipocyte; BA) ※1」は病的肥満に対する新たな治療標的として注目されています。そこで、本研究では、「日本人に多い肥満関連遺伝子タイプ※2」を背景として当社で樹立した遺伝子タイプ別のiPS細胞※3を用い、東京医科歯科大学独自のBA分化誘導技術を応用することで、抗肥満効果をもつBA活性化作用因子のスクリーニング系の開発に成功いたしました。
【研究結果】
専用プレートを用いた培養法では、辺縁整の細胞凝集体(スフィア) ※4が得られました(図1, 写真左)。このスフィアについて、脂肪滴を特異的に染色したところ、細胞の核周囲にはBA特異的な多数の小さな脂肪滴が観察されました(図1, 写真右)。
図1. iPS細胞から分化させた褐色脂肪細胞
そこで、BA特異的遺伝子であるUCP1※5の遺伝子発現を調べたところ、未分化状態と比べて高い発現上昇が確認できました。以上のことから、安定的かつ高効率なiPS細胞由来BAの作製に成功しました。
【今後の展望】
今後はヒトBAを対象とした抗肥満効果をもつ活性化因子のスクリーニングと解析を進めていく予定です(図2)。
図2. BA活性化因子スクリーニングの流れ
遺伝子タイプ別に樹立した細胞をターゲットとした機能性食品成分の抗肥満効果を明らかにすることで、経口摂取を前提とした健康食品やサプリメント等の改良や、オーダーメイドサプリメント等の日本人の体質に沿ったダイエット対策製品の新規開発が期待できます。
<用語説明>
*1:褐色脂肪細胞 (Brown Adipocyte; BA)
ヒトの鎖骨上部や傍脊椎部に分布し、脂肪を燃焼し熱を産生する働きを担っています。
*2:日本人に多い肥満関連遺伝子タイプ
肥満関連遺伝子として、ベータ3アドレナリン受容体遺伝子多型(糖質代謝不全型)、脱共役タンパク質1遺伝子多型(脂質代謝不全型)、ベータ2アドレナリン受容体遺伝子多型(タンパク質代謝促進型)の3種類が知られています。これらの遺伝子に変異がない場合は、生活習慣起因型としています。
*3:iPS細胞 (induced pluripotent stem cell, 人工多能性幹細胞)
人工的に作成されたあらゆる生体組織に成長できる細胞です。京都大学の山中伸弥教授らが2006年に世界で初めてiPS細胞の作製に成功し、2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。
*4:辺縁整の細胞凝集体 (スフィア)
一般的なシャーレでの細胞培養とは異なり、3次元的に培養した細胞の塊の形状のことです。縁が整った球状になっていることを示しています。
*5:UCP1 (Uncoupling protein 1)
日本語で脱共役タンパク質1と呼ばれており、褐色脂肪細胞の分化マーカーの一つです。褐色脂肪細胞のミトコンドリアに局在し、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化を脱共役させる活性を持っています。
DHCはお客様に安全かつ確かな効果を感じられる商品を提供できるよう、より高度な科学的根拠に基づいた研究開発に日々取り組んでいます。お客様の快適な毎日をサポートするため、今後も機能性を有した付加価値の高い製品の開発に努めてまいります。
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(2024/03/26 10:00)
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