医療・医薬・福祉

原因不明の腹痛と急性肝性ポルフィリン症の診断に関する後方視的研究の結果を発表

Alnylam Japan株式会社
臨床現場における急性肝性ポルフィリン症 (AHP) の認識の低さが重要な課題として浮き彫りに-

Alnylam Japan 株式会社 (本社:東京都千代田区、代表取締役社長 岡田 裕、以下「アルナイラム」) は、3 月29 日に開催される第28 回日本病院総合診療医学会学術総会において、「原因不明の腹痛と急性肝性ポルフィリン症の診断に関する後方視的研究」の結果を最終報告することをお知らせします。


近年の検査技術の進歩に伴って、診断可能な腹痛は増加しています1)。しかし、腹痛の原因疾患は多岐にわたり、診断がつかない腹痛症例も一定数あり、その中には、急性肝性ポルフィリン症 (AHP:acute hepatic porphyria) を代表とする希少疾患が含まれている可能性があります。AHP に限らず、臨床現場では、複数の医療機関を受診しても診断がつかない腹痛に苦しむ患者さんは少なくなく、それにもかかわらず、未だに原因不明の腹痛を定義する明確な基準は存在しません。

本研究は、一般社団法人日本病院総合診療医学会 (理事長:広島大学名誉教授、JR 広島病院理事長兼病院長 田妻 進先生) との共同研究であり、2019年4月からの3年間に、本研究を実施している6つの医療機関の総合診療部門を受診し、腹痛の訴えがあり、腹部CT検査、上部・下部消化管内視鏡検査、腹部超音波検査のいずれかを実施した患者についてカルテレビューを実施し、診断不明の腹痛と、腹痛の原因が特定できた患者とのデータを比較したものです。

今回の最終報告では、収集された症例1915例のうち、腹痛の原因が特定されたのは1598例 (83.4%) (AHPは0例)、また診断不明の腹痛は317例 (16.6%) でした。診断不明の腹痛の全例においてAHPの診断基準に含まれているいずれかの臨床所見*が認められ、うち198例 (62.5%) に尿検査が実施されていました。しかしながら、AHPを診断するための尿中アミノレブリン酸 (ALA) 及び尿中ポルフォビリノーゲン (PBG) の測定は行われていなかったことが明らかになりました。

本共同研究の代表研究者である、佐賀大学医学部附属病院 総合診療部教授の多胡 雅毅先生は、「腹痛は誰にでも起こりうる一般的な症状で、激しい腹痛の原因疾患は様々ですが、その中にAHPのような希少疾患が隠れていることがあります。今回の研究結果からは、診断不明の腹痛の患者に対して、AHPを診断するための尿中ALA、PBG測定が一例も実施されていなかったことが明らかになり、臨床現場におけるAHPの認識の低さが重要な課題として浮き彫りになりました。この課題を解決するためには、原因不明の腹痛の定義を確立し、AHPの診断に至るまでのプロセスを一般化することが、希少疾患であるAHPの適切な治療につながるものと考えます」と述べています。

Alnylam Japan株式会社 メディカルアフェアーズ部長のクラウディア・クラベサナは、「AHPは激しい急性の腹痛を主な症状とする稀な遺伝性疾患です。腹痛は多くの疾患で見られる症状であり、AHPが他の疾患と診断されている例も少なくはありません。確定診断に至るまで平均15年を要すると報告されるなど3)、AHP診療ではその診断の難しさが課題となっています。今回の最終報告を受け、AHPを鑑別するために有用な尿中ALA値及び尿中PBG値の測定が、診断不明の腹痛の診療プロセスに含まれていないという現状を改善する必要がある、と考えております。AHPの診断向上に向けて、アルナイラムはあらゆるステークホルダーと緊密に連携し、適切な治療にたどりつけない患者さんに有効な治療を受けていただけるよう、啓発活動にも取り組んで参ります」と述べています。

なお、本研究はAlnylam Japan株式会社からの資金提供を受け、データ集計は株式会社ヌーベルプラスに業務委託し実施されました。データ収集にはAlnylam Japan株式会社は関与しておりません。

*AHPの臨床所見は以下のいずれか1.思春期以降に発症、発症は急性のことが多い 2.種々の程度の腹痛、嘔吐、便秘(消化器症状)3.四肢脱力、痙攣、精神異常(精神神経症状)4.高血圧、頻脈、発熱など (自律神経症状) 5.皮膚症状(光線過敏症)※2)
※急性間欠性ポルフィリン症(AIP)では認められない

AHPについて
急性肝性ポルフィリン症 (AHP) は、生命を脅かしうる激しい急性の腹痛発作が主にみられる遺伝性の希少疾患です。AHP には、急性間欠性ポルフィリン症 (AIP: acute intermittent porphyria)、遺伝性コプロポルフィリン症 (HCP: hereditary coproporphyria)、異型ポルフィリン症 (VP: variegate porphyria)、および ALA 脱水酵素欠損性ポルフィリン症 (ADP: ALA dehydratase deficiency porphyria) の 4 病型があり、いずれの病型も、遺伝子変異により肝臓内のヘム産生に必要な特定の酵素が欠損することで生じます。
AHP は主に思春期から閉経前の女性にみられ、その症状は様々です。最もよくみられる症状は激しい腹痛であり、随伴症状として、四肢痛、背部痛、胸痛、悪心、嘔吐、錯乱、不安、痙攣、四肢脱力、便秘、下痢、暗色尿あるいは赤色尿等がみられることがあります。AHP は発作中に麻痺や呼吸停止が起こる可能性もあることから、生命を脅かす危険もあります。また、患者さんによっては日常生活の機能や生活の質に悪影響を及ぼします。
AHPはその症状が非特異的であるため、婦人科疾患、ウイルス性胃腸炎、過敏性腸症候群(IBS)、虫垂炎などの他の疾患と診断されることもあり4)、世界的には、症状が現れてから診断がつくまでに平均 15 年に及ぶことが報告されています3)。また、AHP の長期合併症には、高血圧、慢性腎不全、肝細胞癌を含む慢性の肝疾患があります。

Alnylam Japan株式会社について
Alnylam Japan 株式会社 (https://www.alnylam.jp/) は、次世代医薬品として注目される核酸医薬の一つである RNAi 治療薬を日本の患者さんに届けるため、2018 年 7 月に設立されました。RNAi 治療薬は、従来はターゲットにできなかったmRNAに選択的に作用することで、これまで治療が困難であった疾患の新たな治療選択肢となる可能性があります。RNAi 技術を応用して開発された世界初の siRNA 製剤オンパットロ(R)点滴静注2mg/mL (一般名:パチシランナトリウム、適応症:トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー) は、当社が日本国内で 2019 年に販売した最初の製品です。2021 年には、2 剤目となる siRNA 製剤ギブラーリ(R)皮下注189mg (一般名:ギボシランナトリウム、適応症:急性肝性ポルフィリン症)、2022年11月には3剤目となるsiRNA 製剤アムヴトラ(R)皮下注25mgシリンジ (一般名:ブトリシランナトリウム、適応症:トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー) を販売しています。当社は、医療の未来を切り拓く可能性のある新しい治療薬の開発に取り組み、アンメットニーズの解消に貢献することを目指しています。

参考文献
1) 急性腹症診療ガイドライン 2015 
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0214/G0000779/0001 (2023/7/16 access)
2) 難病情報センター「ポルフィリン症 (指定難病253)」
https://www.nanbyou.or.jp/entry/5546 (2024/3/13 access)
3) Bonkovsky et al. Am J Med 2014;127:1233-41
4) 近藤 雅雄,他. ALA-Porphyrin science 2012;2:73-82.

MED-JP-AS1-2400071 | March 2024
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