医学生のフィールド

より良い生活実現へ医学生の声を集めて発信
~全日本医学生自治会連合(医学連)~

 全日本医学生自治会連合(医学連)は、大学医学部の学生自治会の連合組織。全国の医学部の3分の1弱が加盟している。良い学生生活を実現するために、学生の声を聞き、大学や国に対して発信や提言をする。2018年は、不正入試問題や医師の過重労働をテーマに調査した。医師に関わる問題に関心が高まる中、医学生のリアルな声を集めて発信する意義は大きい。前委員長の山下さくらさんと、現書記長の伊東元親さんに話を聞いた。

(聞き手・文 医療ライター・稲垣麻里子)

書記長の伊東元親さん


 ◇全国25大学が加盟

 ――医学連について教えてください。

 伊東さん 仕組みとして、全国の医学部学生自治会の連合体で、現在25大学が加盟しています。毎年、定期全国大会で選挙をして、役員が選出されます。自治会によって、活動の内容は違いますが、加盟している大学の学生は全員、各大学の自治会の規約を基に民主的な運営を行っています。


 山下さん 学生としても、こんな医学教育をもっとしてくれたら分かりやすい、こういう施設とか設備があったら学びやすいといった意見を持っています。こうした要求を自分たちで拾い上げて、大学や社会に届ける組織です。医学生だけで活動しています。

 ――活動内容を具体的に教えてください。

 山下さん 一つには「全国的な課題の解決」です。数ある問題や学生からの要求の中でも、学費とか、医学教育の大きな部分、制度の部分など、各自治会単位では解決が難しいものの、全国で上がっている切実な要求があります。それを医学連が各地の自治会から拾い上げて、実現していくための働き掛けをします。

前委員長の山下さくらさん


 ◇臨床研修制度の創設に尽力

 ――どのような要求が上がってくるのですか。

 山下さん かつての大きなものとしては、医師臨床研修制度があります。以前、研修医は、バイトをしないと食べていけないような安い賃金で、過酷な労働環境で働いていました。そこで、研修に対しての医学生の不安な声や研修医の生の声を聞き、署名活動を行いました。

 それが最終的に国会で認められて、現在の医師臨床研修制度ができたんです。当事者の声を集め、「みんなが安心して研修ができる環境づくり」を目指してやってきた結果です。


 ――現在の活動は。

 伊東さん 主に医学生のアンケート結果を社会に発信していくような活動をしています。毎年、調査結果をまとめて、医学生の考えを医学教育学会で発表することを目標にしています。11月くらいからアンケート調査を始めて、7月の頭くらいに発表します。社会的反響や発信する意義を考慮して、公開するようにしています。

 2018年は、入試不正問題と、将来の働き方・労働環境に関して調査しました。19年2月に中間報告をしました。入試不正に関しては、思ったより結果に幅があり、「大学側が差別を容認していることは許されない」といったように、憤りや悔しさを示す回答がある一方、「私大であれば、欲しい人材を選ぶ権利がある」といったように、大学側に理解を示す回答も見られました。

 働き方に関しては、7割の医学生は将来を不安に思っている、という結果でした。また、女性医師の結婚・出産は本来、喜ばしいことだけれど、素直に「おめでとう」と言えない職場環境が悲しいといった意見もありました。


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