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「不思議の国のアリス症候群」と呼ばれる病気がある。世界的に知られる物語のタイトルを病名にした由来は、主人公のアリスの体が大きくなったり小さくなったりする体験とよく似た感覚が表れるためだ。多くは小児期に起こる一過性の症状だが、まれに成人にも見られる。上本町わたなべクリニック(大阪市)の渡辺章範院長に聞いた。
人や物が大きく見えたり、小さく見えたり、ゆがんで見えたり。子どもに多い
▽EBウイルス原因説も
不思議の国のアリス症候群の主な症状は、目の前の人や物が急に大きく見えたり、小さく見えたり、ゆがんで見えたりするというもの。また、空中を浮遊しているような感覚や、自分の姿を見下ろしているような離人症状が表れることもある。
原因ははっきりと分かっていないが、エプスタイン・バー(EB)ウイルスに感染することで、脳の表面に位置する大脳皮質と呼ばれる部分に広範囲にわたって炎症が生じ、知覚異常が引き起こされるからではないかとの説がある。
EBウイルスは3歳ごろまでに6~7割、成人で8~9割が感染するヘルペスウイルスの一種で、ほとんどは無症状か風邪のような軽い症状で経過する。
脳は、目や耳から得る情報を取捨選択して必要なものを収集している。「わずかでも脳に炎症などのトラブルが生じると、情報の収集が乱れ、それにより知覚も乱れて不思議な体験をしたように感じてしまうといわれています」と渡辺院長は説明する。
▽過剰な心配は不要
子どもが症状を訴えても、保護者は「夢でも見たのだろう」と真に受けない。多くは一過性のため本人の記憶も薄れていき、問題が深刻化することは少ない。もし繰り返すようであれば、小児科の受診が勧められる。成人であれば、神経内科が適当だ。
不思議の国のアリス症候群は、子どもでは風邪や発熱、頭痛などが引き金となることが多い。診断では小児の自閉症スペクトラム障害、てんかん発作との鑑別が重要になる。成人では片頭痛との合併が多く見られる。
「幻覚は精神疾患の症状でもあるので、子どもの場合、不思議の国のアリス症候群と診断されれば、過剰な心配はいりません。多くは、症状はそのうち表れなくなるでしょう。成人では、片頭痛の治療で症状が改善するケースがあります」と渡辺院長は話している。(メディカルトリビューン=時事)
(2019/12/03 07:00)
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