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小児患者の強い味方―ファシリティドッグ 
ハンドラーとペアで治療に介入

 介助犬や盲導犬のように、犬はさまざまな分野で活躍している。「ファシリティドッグ」もその一つだ。専門的な動物介在療法の訓練を受け、特定の施設に常勤する犬のことで、日本では小児がんや重い病気を持つ子どもたちへの支援を目的とし、2010年から正式に導入された。神奈川県立こども医療センター(横浜市)で、ファシリティドッグのアニーと活動するハンドラーの森田優子さんに話を聞いた。

医療スタッフとして重い病気の子どもを支援

 ▽治療への意欲引き出す

 ファシリティドッグは、日本では認定NPO法人シャイン・オン・キッズが派遣している。血筋がしっかりとしたラブラドールレトリバーやゴールデンレトリバーから選抜され、ハワイの専門施設で育成されている。最初の導入は静岡県立こども病院(静岡市)で、12年に神奈川県立こども医療センター、19年に東京都立小児総合医療センター(府中市)と、現在3頭のファシリティドッグが活動している。

 ファシリティドッグは、入院している子どもに癒やしを与えるだけでなく、治療にも関わるのが特徴だ。この点からボランティアではなく医療スタッフとして位置付けられていて、さまざまなシーンで子どもに寄り添う。

 森田さんは「アニーがいると泣かずに採血できる、アニーのリードを持てば怖い処置室にも自分で行ける、アニーが付き添ってくれれば薬がちゃんと飲めるなど、子どもたちの不安や恐怖を取り除き、頑張ろうという力を引き出すのがファシリティドッグの役目です」と説明する。人工呼吸器を着けていたり、胸腔ドレーンが挿入されていたりする子どもと、添い寝をすることもあるという。

 ▽導入増に期待

 犬をコントロールするハンドラーは、臨床経験を持つ医療従事者である。ファシリティドッグは、動物福祉の観点から1時間仕事をしたら1時間休憩することが決められているため、犬の健康管理や活動スケジュールを立てるのは重要な役目だという。

 犬を導入していることで、病院内では感染症対策として規則や手順が細かく決められている。森田さんは「例えばノミやダニ、唾液を介しての感染症などは薬で事前に予防し、犬の体は各病棟に入る前後に入念に清拭(せいしき)しています。病院内の菌の検出数は、ファシリティドッグ導入の前後で変化がないことを学会でも報告しています」と話す。

 現在400床を超える同院を、森田さんとアニーの1チームで回っている。アメリカでは100床ほどの病院に4チームいる所もあり、「今後、日本のファシリティドッグが増えることを期待しています」と森田さんは話している。(メディカルトリビューン=時事)

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