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がんの進行に伴って体重が減り、食欲不振、筋肉の減少も表れて、体力低下でがん治療が十分に行えなくなる―。そんな悪循環を引き起こす疾患が「がん悪液質」だ。聖マリアンナ医科大学病院(川崎市宮前区)腫瘍内科の中島貴子部長は「がんの治療が進歩し、がんと共にいかに長く生きるかという時代になっています。悪液質に対処することは、『生活の質』を保ちながら長く生きることにおいて重要です」と説明する。
▽がん細胞が作り出す物質で
がん悪液質の基準は「過去6カ月間で体重が5%を超えて減少すること」などで、進行がんと診断された時点で半数近くが、末期がん患者では8割が悪液質だとされる。がん悪液質になると、体力が低下して生活の質が低下する。体力がないと抗がん剤の量を減らさざるを得ず、結果として生存期間が短くなるという悪循環に陥る可能性もある。
がん細胞はさまざまな物質を作り出し、筋肉や脂肪を分解したり、食欲を抑えたりする。その結果、体重減少や食欲不振が生じる。筋力が低下すると活動量が減って食欲が湧かず、さらに体重が減るなど、悪液質の症状は相互に関連しているという。
がん悪液質は胃がん、膵臓(すいぞう)がん、肺がんなどで生じやすい。「胃は食べ物が最初に入り、膵臓は消化液を分泌するといったように、消化に関わる臓器のがんだからと考えられます。肺がん患者では呼吸機能が低下し、活動量が減るからでしょう」と中島部長は解説する。
悪循環を避けるには、悪液質の前段階(前悪液質)で察知し、悪液質への移行を抑えることが重要になる。そのためには、定期的な運動、食べられるような食材・調理法の工夫、足りない栄養素の補充などを行う。運動といっても、散歩や、「椅子にしっかりとつかまって片足のかかとを上げる」「椅子に座って片方の膝を伸ばす」など、軽いものでよい。
悪液質の前段階で踏みとどまるか、前段階から離脱できれば、がん治療が行いやすくなり、気持ちも前向きになって生活の質が向上することが期待できる。がん悪液質の薬は今のところ承認されていないが、食欲促進などの効果があるアナモレリンが開発され、厚生労働省で審査されている(2019年12月時点)。
中島部長は「体重の増減に一喜一憂する必要はありませんが、体重や食欲、体力的なことが気になったら、ぜひ医師や看護師、薬剤師に伝えてください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/06/04 13:52)
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