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加齢に伴い、かめない食品が増える、食事でむせたり食べこぼしたりする、滑舌が悪くなる、口の中が渇きやすくなる―。こうした口腔(こうくう)機能の衰えを「オーラルフレイル」と言う。放置すると、全身の衰えにつながり、要介護や死亡のリスクが高まる。
無理のない範囲で口の周りの筋肉を動かして
▽要介護や死亡が倍増
80歳で歯を20本以上残す目標を掲げた「8020運動」の啓発が進んだかいあって、30年前には10%に満たなかった達成率が2017年には51.2%まで上昇した。しかし近年、歯の本数に加えて、かむ力や飲み込む力などの口腔機能を維持することも重要だと分かってきた。
口腔機能が低下すると、食べにくい食品を避けたり、食が細くなったりして、栄養の偏りや不足を招き、筋力など全身の機能低下にもつながる。話しにくいからと、人と接しなくなり、閉じこもりがちになるという弊害もある。
東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科の平野浩彦部長は「東京大学との共同研究で、65歳以上の高齢者2000人を調査したところ、オーラルフレイルがある人は、ない人に比べて、4年後に要介護になるリスクが2.4倍、亡くなるリスクが2.1倍と高くなることが分かりました」と語る。
▽口を動かす運動が有効
オーラルフレイルを防ぐには、日頃から口の周りの筋肉を動かす運動を行うといい。また、うがいをしっかり行うのもお勧めだという。「ブクブクうがいやガラガラうがいは、頬の内側や喉の周囲の筋肉を動かし、口腔機能をフル活用します。意識して、うがいを少し長めに、行う回数を多くするとよいでしょう。うがいなら日頃からやり慣れているので、継続も容易でしょう」と平野部長はアドバイスする。
かむ力をチェックするには、奥歯でかんだときにこめかみの筋肉(側頭筋)が動くかどうかがポイント。「歯がすり減ったり、義歯になったりして、奥歯でしっかりかめていない人は、側頭筋が動いておらず、かむ力が弱まっています。かみ合わせを調整するなどの治療が必要になることもあります」と平野部長。
なお、オーラルフレイルが進み、機能低下が明らかな場合は「口腔機能低下症」と診断される。検査は歯科医院で受けられ、保険適用になっている。「85歳以上の約7割が口腔機能低下症と診断されるというデータが出ています。口の機能低下は気付きにくいですが、意外と多いのです」と平野部長。健康長寿を実現するために、意識しておきたい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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