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消化性潰瘍は、主にヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)の感染、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗血栓薬の副作用によって発症する。胃や十二指腸などの粘膜に炎症を起こしたり、胃粘膜の表面を守っている粘液が減ったりすることで食物を分解する胃酸によって粘膜が傷つきやすくなるためだ。しかし、ピロリ菌の感染がない、またはピロリ菌の除菌後やこれらの薬を服用していなくても胃や十二指腸に潰瘍が生じる原因不明の「特発性潰瘍」がある。杏林大学医学部総合医療学講座(東京都三鷹市)の徳永健吾准教授に聞いた。
特発性潰瘍の発症リスク因子
▽突然下血する場合も
特発性潰瘍の原因は不明だが、〔1〕高齢者で高血圧、糖尿病、脂質異常症などの基礎疾患がある〔2〕多種類の薬を服用している〔3〕強いストレスがある―といったことが発症のリスクを高めると考えられている。高齢者は特発性潰瘍の主な症状である胃痛を感じにくく、下血や吐血を機に発見されることもある。
徳永准教授によると、ピロリ菌の感染率低下や除菌療法の普及によって消化性潰瘍自体が減った一方で、特発性潰瘍の割合は増えている。消化性潰瘍の12%程度が特発性潰瘍とする報告もある。
▽抗炎症薬や抗血栓薬に注意
一般の消化性潰瘍と同じ治療法が選択され、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用する。一般の消化性潰瘍では薬の服用開始から1~2カ月程度で改善するが、特発性潰瘍は治りにくく再発しやすいため、しばらく経過を見ることになる。
また近年、特発性潰瘍の患者からピロリ菌と似た形状のヘリコバクター・スイス菌が検出され、特発性潰瘍との関連を探る研究が進められている。徳永准教授は、「特発性潰瘍の原因がヘリコバクター・スイス菌であることを突き止められれば、将来的に除菌療法も治療の一つになる可能性があります」という。
予防法は、ピロリ菌があれば胃や十二指腸の粘膜が傷つかないように除菌し、NSAIDsや抗血栓薬の長期服用を避ける。ただし、ピロリ菌の除菌療法に使用する抗菌薬やPPIにより腸内細菌のバランスが乱れ、クロストリジウム・ディフィシル菌という細菌に感染して重症化することが報告されているという。「除菌後に下痢が続くようなら注意が必要です。また、NSAIDsは市販の痛み止めにも含まれているので、服用前に医師や薬剤師に相談するといいでしょう」(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/10/29 06:00)
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