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新型コロナウイルスの感染拡大で、医学生の臨床実習が中止になりました。学生たちのモチベーションが低下したり、技術習得に不安を感じたりしている、といいます。
全日本医学生自治連合で、医学生1000人に昨年8月から9月に実施したアンケート調査では、学生の78%が患者の問診ができなくなり、48%が手術室への立ち入りが禁止になりました。日本医科大学では、対面式の臨床実習をすべて中止する代わりに、バーチャルリアリティー(VR)を使い救急医療の実習を展開しています。
そのVR教材を先端技術開発会社ジョリーグッド(東京都中央区)と共同で開発した、日本医科大学大学院医学研究科教授の横堀將司先生に話を聞きました。
救急医療VRの装置付きの現場
海原 VRを使った臨床研修の開発は、いつから始めたのですか。
横堀 実は、VRを教育に使う試みは、コロナ禍の前から既に導入していました。最初は、手術手技の臨床研究で、術者の手技を均一化するための教材を作成しようとジョリーグッドに声を掛けたのが始まりでした。
その後、これを授業に応用する試みを始めました。以前は、学生に講義をしても、リアリティーを伝え切れず、物足りないと思っていました。
ビデオ動画などを使用しましたが、より印象の強い授業を展開するため、自分がその場にいるような気持ちになれる授業ができたらいいなと考え、VR教材を作成しました。
◆モチベーションと緊張感
海原 実際の患者さんで手技を行うと、自信をなくす学生が多い。その要因として救急現場の緊張感の体験不足が指摘されます。体験不足を補う必要性を感じられていたのでしょうか?
横堀 早い段階からリアリティーのある経験をさせる、いわゆるアーリー・エクスポージャー(早期体験)が大事だと思っていました。学生が自分の将来をイメージでき、モチベーションや緊張感を保つ学習効果を高めると思っています。
海原 開発で苦労したことや、留意点を教えてください。
横堀 まずは、病院の倫理委員会をしっかりと通すこと。モザイク処理をしたり、個人情報を消したりするのはもちろんですが、患者さんの診療映像を使用するため、しっかりとした説明と同意が必要です。そのプロセスを堅固にしておくことが重要と考えています。
臨床実習の代わりに活用するVRコンテンツの条件は、その臨床現場にいるかのような当事者体験と、仮想空間ならではの適切な情報の追加が必要になります。
処置にあたるスタッフの目線を、完全再現する現場撮影に加え、編集の過程でナレーションやモニター画像を加える。より多くの情報量をVRコンテンツに入れ込む手間が掛かります。
作成するコンテンツの目的は何か、伝えたいメッセージは何かを明確にすることが、重要と考えています。双方向性の授業を展開するための工夫も必要です。
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