治療・予防

ピロリ菌感染と関連―十二指腸潰瘍
~30年で1割に減少、高齢者は注意(昭和大学横浜市北部病院消化器センター 宮地英行准教授)~

 医師が日常の診療で遭遇する頻度が高い病気の一つとされてきた十二指腸潰瘍。患者が減っているというが、なぜなのか。昭和大学横浜市北部病院(横浜市)消化器センターの宮地英行准教授に話を聞いた。

十二指腸潰瘍の診断には胃カメラなどを行う

 ▽無症状の人も

 十二指腸潰瘍は、胃と小腸の間にある十二指腸の粘膜が胃酸によってただれ、えぐれてしまう病気。症状は、胸焼けや吐き気、鈍い痛みなど多彩だが、無症状のことも少なくない。

 厚生労働省の調査によると、2014年の推定患者数は4400人で、1984年の10分の1に減少。発症しやすい年齢は、1999年の40~50代から、2005年には50~60代、17年には60代と高齢になっている。

 十二指腸潰瘍と密接な関係があるのがピロリ菌だ。ピロリ菌は、食べ物や飲み物と一緒に口から体内に侵入する。乳幼児の頃にピロリ菌に感染し、ピロリ菌が胃にすみついたまま成長すると、長い間、炎症を繰り返すうちに胃・十二指腸潰瘍や胃がんができる。

 日本の衛生環境や離乳食が改善されるにつれ、ピロリ菌の感染率は低下した。国内の調査では、1974年に50代のほぼ10割、0~9歳児の3割近くが感染していたが、94年にはそれぞれ7割、1割ほどとなった。

 「ピロリ菌感染は現在さらに減っているでしょう。若い方ではピロリ菌はほとんどいなくなりました。十二指腸潰瘍の患者さんが減少し、発症しやすい年齢が上がってきているのは、ピロリ菌感染減少との関連が大きいと考えられます」と宮地准教授は説明する。

 逆に増えているのが、解熱や鎮痛のために用いられる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の服用による十二指腸潰瘍だという。

 ▽ピロリ除菌を優先

 診断は、口や鼻から内視鏡を挿入する胃カメラと、ピロリ菌検査により行う。ピロリ菌検査は多数あるが、より精度が高いのは息を調べる尿素呼気試験と、便を調べる便中抗原測定法。除菌の判定にも有用だという。

 ピロリ菌感染が分かれば、治療では除菌を優先する。3種類の薬を1週間内服すると、大半の患者で除菌できる。NSAIDsの服用が原因の十二指腸潰瘍の場合は、服薬を中止するのが原則だ。難しい時は、胃酸の分泌を抑える薬などを服用する。

 「60代以上の人はピロリ菌感染の可能性が高いです。ピロリ菌は胃がんとも関連するため、胃カメラとピロリ菌検査を受けることを強くお勧めします」と宮地准教授はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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