治療・予防

転移の確率高い食道がん
内視鏡による早期発見・治療が有効

 消化器系がんの中でも、検診の対象となっている胃がんや大腸がんに比べて認知度が低いのが食道がんだ。しかし。咽頭直下から胃の直上にかけての食道に発症するため、頸部(けいぶ)のリンパ節などを通して他の臓器に転移する確率が高く、厳しい結果に至ることが少なくない。発病率は10万人当たり17.9人で、50代から増加し始めて70代にピークを迎える。他のがんとの併発も多く、進行すると治癒率(5年生存率)=用語説明=も高くはない。歌舞伎俳優の中村勘三郎さんや歌手の桑田佳祐さんら著名人も食道がんを患った。早期に発見し、治療につなげるにはどうしたらよいのか。

内視鏡のコントローラーを手にデーターを確認する慶応大学医学部腫瘍センターの矢作直久教授(同教授提供)

 ◇胃がん検診でカバー

 「現在食道がんに絞ったがん検診はないが、内視鏡による胃がん検診では通常、食道から胃、十二指腸まではカバーする。結果として食道の小さな凹凸の不整だけでなく、組織の色調変化などによりがんと疑わしい早期の兆候を発見することができる」 

 慶応大学医学部低侵襲療法研究開発部門長の矢作直久・腫瘍センター教授は、内視鏡検査による早期発見の効果をこう説明する。

 近年は胃がん検診に内視鏡検査を含める市区町村も増えている。矢作教授は「内視鏡の拡大機能や解像度の向上などの技術的進歩も大きい。同時に、内視鏡を操作する医師の技能も上がっている。内視鏡によるがん検診が普及すれば、食道がんも完治するケースが増えるだろう」と、内視鏡検査による食道がんの早期発見の増加に期待を抱いている。

 ◇患者の負担大、通常手術

 日本人の食道がんのほとんどは、「偏平(へんぺい)上皮がん」という種類だ。特徴的な血管が見られるため、内視鏡検査によって腫瘍ががんかどうかを素早く診断することができる。矢作教授は「発見から診断までが短時間なので、それだけすみやかに治療に入ることができる。これが大きなメリットだ」と強調する。

 さらにもう一つ、内視鏡による利点がある。経口内視鏡に期待されているのが、早期がんに対し、患者負担の少ない「低侵襲手術」だ。

ケーブルとカメラを内蔵した内視鏡。先端部は細い(矢作教授提供)

 食道がんの通常の手術では、進行がんが対象の多くを占めることがある。胸と腹部の皮膚を切開して腫瘍を切除、転移・再発を防ぐために頸部から腹部までのリンパ節を取り除いた上で、切除した食道の代替として胃の上部を筒状に形成して頸部に引っ張り上げるのが一般的だという。

 「傷口も大きく、胃を引っ張り上げるために胃の機能が損なわれ、日々の食事などにも大きな支障が生じてしまう。また、喉に近い部位の腫瘍では発声機能や物を飲み込む嚥下(えんげ)機能にも影響が及んでしまう」。矢作教授は通常手術における課題をこう指摘する。

 ◇内視鏡治療のメリット

 一方、口から手術用の内視鏡を入れる経口内視鏡手術については「食道の粘膜から深い部分にがん細胞が浸潤(食い込むこと)していなければ、直径5~6センチで食道表面に平たく張り付いているような腫瘍でも切除できる」と言う。

 所要時間や使用する機材、要求される医師の技量は異なるといった面もあるが、基本的には通常の内視鏡診療で胃などの小さなポリープを切除することと同じなので、患者の負担は極めて少ない。

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