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つり革につかまったり、ボールを投げたりするなど、腕を上げているときに肩や腕に痛みやしびれが生じて力が入りにくくなるのは、胸郭出口症候群(TOS)が原因かもしれない。慶友整形外科病院(群馬県館林市)の古島弘三副院長によると、TOSは診断が難しく、有効な治療を受けられずにいる人が少なくないという。
胸郭出口症候群のセルフチェック「ルーステスト」
▽「難民」生む疾患
鎖骨と一番上の肋骨(ろっこつ)「第一肋骨」の隙間には、動脈や神経が通っている。この隙間が狭いと、腕を挙げたときに血管や神経が圧迫されたり、引っ張られたりする。そうした動作を繰り返すうちに首、肩、肘、手に痛み、しびれ、むくみ、蒼白(そうはく)感、握力の低下などの症状が表れるのがTOSだ。
同院の胸郭出口症候群治療センターには、野球やテニスなど繰り返し腕を上げることが多いスポーツの選手、バイオリン奏者、理容師、美容師をはじめ、小学生から中高年、主婦など幅広い年齢や職業の患者が受診する。
15年以上にわたりTOSの専門的治療に携わってきた古島副院長は「TOSは検査では異常を見つけにくく、手術をして初めて異常な病態が判明するケースもあります。そのため複数の病院を回って当センターにたどり着く『TOS難民』が少なくないのも特徴です」と説明する。首や肩の手術をしても症状が改善しない患者の中に、TOSが隠れているケースもあるという。
▽「グーパー」チェック
同センターでは、問診、触診、超音波エコーや、骨格を立体的に映し出す「3DCT」などの画像検査により、総合的に診断する。治療は、薬物療法、リハビリで効果が見られない場合、最後の策として手術を検討する。内視鏡手術で第一肋骨を部分的に切除し、一部の筋肉を切り離して血管と神経の圧迫をなくす。昨年、同センターでは187件の手術を実施し、スポーツ選手の約9割、一般人の約8割で症状が改善したという。
古島副院長は、早期発見のためにセルフチェックができると話す。肘を90度に曲げた状態で肩の高さまで両腕を上げ、両手でグーとパーの開閉を1分間繰り返す「ルーステスト」を行う。だるさ、痛み、しびれで腕を上げていられなくなるほどつらくなれば、TOSの疑いがある。
「肩や腕のしびれや痛みは、TOSの可能性も踏まえて診てもらうことが大切です」と古島副院長は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/08/21 05:00)
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