むくみ 家庭の医学

 むくみとは、脂肪の蓄積で生じる肥満とは異なり、水分の貯留によって、顔や手足などが痛みを伴わずにはれる症状です。病気によって、むくみの出る場所に特徴があります。急性腎炎では顔、特にまぶたがはれることが多いです。肺や胸膜の腫瘍の場合は、胸部に生じます。乳がんの手術後や、上大静脈の閉塞では、腕がむくみます。妊娠や心臓病では、多くは下肢が、特に夕方になるとむくみます。骨盤内の手術後や、子宮がんなどに対する放射線治療後に、下肢がむくむことがあります。血栓性静脈炎は、下肢に起こりやすく、炎症のある部分は赤くはれて痛み、その末梢(まっしょう)側がむくみます。
 むくみがひどくなると全身の皮下にあらわれ、特に、立っているときの足や、寝ているときの背なかなど、下になっている部分に多くみられます。多くの心臓病や腎臓病が原因となります。甲状腺機能低下症(粘液水腫〈ねんえきすいしゅ〉)では、むくみのある部分がやわらかくなく、簡単にへこまないのが特徴です。原発性アルドステロン症、クッシング症候群などの内分泌の病気や、副腎皮質ホルモン、血管をひろげる薬、薬の副作用で腎臓の血流がわるくなった場合にも、全身にむくみが生じます。肝臓疾患では、むくみのほかに、腹水のために腹がふくれたり、胸腹部の静脈がはれたりします。貧血や悪性腫瘍でもむくみます。

■むくみ
症状病名そのほかの症状など
顔がむくむ急性糸球体腎炎発熱、尿が少ない、血尿
上肢がむくむリンパ浮腫乳がん手術後、片側性
下肢がむくむ妊娠腹部膨隆、月経がない
血栓性静脈炎急性期の発赤、痛み、紫色の皮膚、 静脈瘤
骨盤内の手術後
心不全血たん、食欲がない、冷え
リンパ浮腫骨盤内リンパ郭清による、片側性(骨盤内の郭清側。両側性もある)
全身がむくむ急性腎障害高血圧、尿が少ない
ネフローゼ症候群尿が泡立つ、体重増加
甲状腺機能低下症汗が少ない、毛が薄い、眠け、不活発、さむがり
原発性アルドステロン症高血圧
クッシング症候群円形顔貌、皮下出血、肥満、皮膚の赤い線条、多毛、高血圧
肝硬変黄疸、腹水、出血傾向、息切れ、吐血、食欲不振、疲れ
貧血疲れやすい、めまい、蒼白(顔いろ)、食欲がない、息切れ、脈が速い
がんだるい、食欲低下、体重減少


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹