教えて!けいゆう先生

点滴に関する三つのこと、知っていると安心です 外科医・山本 健人

 皆さんは、病院で点滴を受けたことがありますか?

 点滴は日常的に施される、ありふれた治療ですが、その仕組みは意外に知られていません。

入院時などによくみかける点滴の風景。そこにはさまざまな仕掛けがあります【時事通信社】

 点滴に関する知識を三つ、紹介してみます。

 ◆針が入ったまま?

 点滴をしている最中に、皮膚に針が入ったままだと思っている人は多いのではないでしょうか。「怖くて手を動かせなかった」という人も多いかもしれません。

 実は多くの場合、点滴をしている最中に血管に入っているのは鋭利な針ではなく、軟らかい管です。

 点滴を始める際は、皮膚と血管に針を貫通させるのですが、その後は細く短い管を血管の中に残し、針を抜いているのです。

 この軟らかい管のことを、「末梢静脈カテーテル」と呼びます。カテーテルとは、医療用の細長い管のことですね(ほんの短時間だけの点滴で、針を刺したままにしておき、終わればすぐに抜く例外的なケースもあります)。

 ◆点滴は静脈から

 点滴の主な目的は、水分や電解質、栄養分を体に補うことにあります。

 では、注射するのは動脈でしょうか?それとも静脈でしょうか?

 一般的な点滴は、静脈に針を指して行います。なぜなら、皮膚の表面に透けて見えている血管はほとんどが静脈なので、静脈への点滴は比較的容易に行えるからです。

 一方、ほとんどの動脈は体表面から見えず、深いところを走っています。静脈ほど簡単には針を刺すことができません。

 ただし、手術室や集中治療室で、特別な目的で動脈に針を刺し、カテーテルを入れることがあります(厳密な血圧測定をしたい場合や、動脈から定期的に採血が必要な場合など)。

 その場合は、例外的に浅いところを通る動脈に針を指します。

 では、その「浅いところ」とは、一体どこでしょうか?

 想像してみてください。動脈は静脈と違って、拍動しています。手を触れて血管の拍動が触れるなら、それは動脈です。

 つまり、手首の内側や首、足の付け根などですね。試しに触れてみると、簡単に拍動を感じられるはずです。

 ◆「ポタポタ」の理由

 点滴の管の途中には、ポタポタと滴が落ちる様子が見える、小さな筒があります。これを「チャンバー」と呼びます。

 この筒、何のためにあるのでしょうか?

 実は、このポタポタの落ちる頻度から、液体が体に入る速度を知ることができるのです。

 病棟でこの速度調整を行うのは、主に看護師です。

 一定時間に落ちる水滴の数を測定することで、「500ミリリットルの製剤を6時間で投与する」「100ミリリットルの製剤を30分で投与する」といった速度調整ができます。

 製剤の種類や点滴を行う目的によって、投与すべき速度は異なるため、こうした調整は極めて大切なのですね。

 意外に知らない点滴の知識をまとめてみました。

 皆さんは、どのくらい知っていたでしょうか?

(了)

 山本 健人(やまもと・たけひと) 医師・医学博士。2010年京都大学医学部卒業。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医、ICD(感染管理医師)など。Yahoo!ニュース個人オーサー。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、開設3年で1000万PV超。各地で一般向け講演なども精力的に行っている。著書に「医者が教える正しい病院のかかり方」(幻冬舎)、「すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険」(ダイヤモンド社)など多数。

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