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加齢で聞こえにくくなると、社会生活に支障を来したり、認知症リスクを高めたりすることが分かっている。しかし現在、年齢とともに聴覚機能が低下する加齢性難聴への有効な治療法はない。聴覚機能の低下を含む体の衰え「ヒアリングフレイル」について、太田総合病院(川崎市)中耳内視鏡手術センターの欠畑誠治センター長に話を聞いた。
加齢性難聴に伴う社会生活への影響
◇65歳から増える加齢性難聴
聞こえが悪い状態を指す難聴には、大きく分けて外耳や中耳に原因がある「伝音難聴」、内耳や蝸牛(かぎゅう)神経、脳に原因がある「感音難聴」、その二つの症状からなる「混合型難聴」がある。
加齢性難聴は感音難聴の一つで、音による振動を電気信号に変える細胞や脳に情報を伝える神経細胞の「シナプス」が減少し、脳に音の情報を送る能力が低下することが要因とされる。
25デシベル(ささやき声程度)以上の音が聞こえない難聴の人は、65歳を超えると急激に増加する。「加齢性難聴の問題は、聞こえないことでコミュニケーションに支障が出る、社会的に孤立する、認知症のリスクが高まることなどが挙げられます」
◇補聴器で聴力を補う
加齢性難聴を防ぐことは難しいが、進行を予防することで認知症リスクを抑え、生活の質(QOL)を維持することは可能だ。
「糖尿病や虚血性心疾患、腎疾患などの生活習慣病の他、長時間騒音にさらされる生活や、耳の血流を悪化させる喫煙などが加齢性難聴を進行させます。早期に補聴器で聴力を補うことが大切です」
ただ、現在75歳以上の高齢者を対象に行われているフレイル健診の項目に聴覚機能の検査は含まれていない。このため、自分で耳鼻咽喉科を受診し検査を受けなければ機能の低下を認識しづらい。聞こえの悪さは「年齢のせい」「仕方ない」と思い込み受診しない人も少なくない。
「ヒアリングフレイルの予防が、継続的な社会参加や介護予防、認知症予防につながります。80歳で30デシベル(鉛筆による筆記音など)の聴力を維持することを目標に、70歳以降は年に一度、聴覚検査を受けましょう」と欠畑センター長は呼び掛ける。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/09/28 05:00)
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