治療・予防

一生残るかもしれないニキビの痕
~軽く見ないで早期の治療を~

 「若いから仕方ない」「広告で見た市販薬(OTC)で十分」などと、軽く扱われることが少なくないのがニキビだ。しかし、こじらせたニキビの痕が一生残ってしまうこともある。近年は治療方法も改良され、早期に皮膚科を受診して治療を続ければ、痕も残らずに治すことができる。皮膚科専門医は「ニキビを軽視せずに皮膚科を受診し、一定の時間をかけて治療を受けてほしい」と呼び掛けている。

おでこの白ニキビ

 ◇前段階の「白ニキビ」

 「今までニキビと言われてきたのは、詳しくは『赤ニキビ』のことで、皮脂が皮膚の毛穴に詰まり、底にアクネ菌などの常在菌が繁殖して引き起こす炎症だ。この前段階として、皮脂が詰まって皮膚表面に白い斑点が見えてくる『白ニキビ』の段階がある」

 皮膚科専門医である順天堂大学皮膚科の木村有太子医師はこう話すとともに、「これまでは赤ニキビになってから抗菌剤などで治療するのが一般的だったが、現在は白ニキビの段階から、毛穴の詰まりを解消する治療が可能になっている」と、ニキビ治療の現状を説明する。

一般にニキビと思われているのは赤ニキビ

 ◇外見に大きな影響

 炎症が起きていない白ニキビの段階から治療すれば、炎症自体による痛みやかゆみなど直接的な問題だけでなく、炎症が治まっても残るニキビ痕の発生を防ぐことができる。木村医師は「ニキビの痕は一生残ることもある。外見に大きく影響するため、生活の質(QOL)を損なうことも少なくない重大な問題。『たかがニキビ痕』と軽視しないでほしい」と強調する。

 ただ、白ニキビの段階で患者自身がニキビと判断するのには難しい面もある。「肌の調子が悪い」と感じたり、赤ニキビができて受診した病院で周囲の白ニキビも発見されたりする事例も多い。木村医師は「初期のニキビの自己判断はなかなか難しい。おかしいと思ったら受診することを勧めたい」と言う。

木村有太子医師

 ◇大切なスキンケア

 白ニキビの実際の治療は、皮脂詰まりの原因になる皮膚の角化部分を取り除くことが中心になる。白くプチッとした部分だけでなく、額や頬などニキビが出やすい皮脂の分泌が多い部分を中心に顔全体に処方された薬を塗っていく。完治までには3~6カ月ほどかかるが、治療効果はかなりのものだという。ただ、薬の塗り方や、保湿や洗顔などのスキンケアの指導もあるため、最低でも1カ月に1度は受診する必要がある。特にスキンケアは、皮膚の状態を良好に保つためにニキビ対策の重要な要素になるため欠かせない。

 皮脂を無理やり落とそうと強い力で肌をこすったり、刺激の強い洗顔剤などを使ったりすると、皮膚表面の組織を痛めてしまい逆効果になる。1日1~2回はしてもらいたい洗顔自体も、洗い残す部分が出ないようにする洗い方や、その後の乾燥を防ぐための保湿剤の使い方などを指導することが多い。「赤くて痛い場所に薬を塗るだけではなかなか治らないことを、患者に理解してもらうことも大切だ」。小学生や中学生は小児科の受診を考えるかもしれないが、スキンケアに精通した皮膚科専門医を受診した方がよいだろう。

 ◇化粧品は低刺激の物を

 スキンケアでもう一つ問題になるのが、化粧品を使ったメーキャップだ。近年は成人に達してからもストレスなどが原因でニキビに悩まされる人も増えている。仕事などの関係で化粧をやめられないことも一因だとされる。

 毛穴を閉塞(へいそく)しやすい油性でカバー力のあるコンシーラーやファンデーションなどの刺激が皮膚の状態を悪化させていることもある。「それまで使っていた化粧品の使用をやめ、低刺激性でニキビができにくい化粧品であるテストを行った『ノンコメドジェニックテスト済み』と記載のある化粧品に切り替えた方がよい」と、木村医師が患者にアドバイスする場合もある。さらに、ニキビの出ていない口元などへのポイントメークに切り替える対策も指導するという。

 「学生も含めて、メーキャップは大事な自己表現の一つなので、簡単に『治療期間中はやめて』などとは言わない。安心して専門医に相談してほしい」と木村医師。また、前髪の縁が皮膚を刺激してニキビが絶えない場合などは、髪形の一時的な変更を勧めるケースがある。患者と医師の間で丁寧な意思の疎通が必要となるケースも多い。(喜多壮太郎)


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