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国立精神・神経医療研究センターの調査によると、中高生の約1割がリストカットなどの自傷行為を1回以上経験し、そのうち約6割は10回以上行ったことがあるという。
自傷行為の目的は自殺ではなく、不安や怒りを軽減することだと言われる。だが「その傷痕を後ろめたく感じ、人付き合いなどを制限する人は少なくありません。新たな人生を歩むために、残った傷痕の治療への一歩を踏み出してほしいです」と、日本自傷リストカット支援協会代表理事で、きずときずあとのクリニック豊洲院(東京都江東区)の村松英之院長は話す。
中高生の1割が自傷行為を経験
◇傷痕は消えないが薄く
傷痕の治療は通常、形成外科が専門だが、原因がリストカットの場合は自費診療となる上、行う医院は多くない。同院ではレーザー、切除術、削皮術、戻し植皮術の4種類の治療を行う。「どの治療も傷痕は完全には消えませんが、薄くなったり、自傷行為の痕と分かりにくくなったりします」
レーザーは照射ごとに傷痕が薄く、凹凸が平らになるが、太く深い傷痕には効果が出にくい。切除術は範囲の小さいリストカット痕に適しているが、かえって目立つこともある。削皮術は炭酸ガスレーザーで傷痕と周辺を削り、やけど痕のように見せる。小さな範囲が対象だが、傷痕の盛り上がりや色素沈着が起こりやすい。
戻し植皮術は傷痕部分の皮膚を専用機器で薄く取り、90度回転させて植皮する。軽いやけど痕に見える。「戻し植皮術は傷痕の大きさ、深さに関係なく、さまざまなリストカット痕に適応できます」
◇幸せになってよい
「戻し植皮術のメリットは、術後の傷が赤く盛り上がるリスクが最も低く、ほぼすべての患者さんがトラブルなく終わることです」。術後2週間程度はギプスで固定し、色素沈着を防ぐためにスキンケアが必要だが、1年程度で肌の状態は落ち着くそうだ。
昨年同院でリストカット痕の治療を受けた患者の半数近くは、戻し植皮術を選んだという。だが手術への恐怖や、高額な手術費用がかかるために断念する人、自分を肯定できずに踏み切れない人もいる。
「患者さんの中には自分には治療をして幸せになる資格はないと考える人もいます。単に傷痕を目立たなくするだけでなく、治療を再出発のきっかけにしてほしいと思っています」と村松院長は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/12/30 05:00)
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