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新学期の子どもに「心のつらさ」
~不登校や自傷行為も~

 夏休みが終わって新学期に入ると、生活リズムの変化や再開した学校生活になじめずに、悩みを抱える児童や生徒が増えてくる。中には自ら命を絶ってしまったり、不登校やリストカットなどの自傷行為に陥ったりする事例も少なくない。保護者や教育関係者らが対応を進めている一方で、医療機関も小児科や小児精神科が中心になって、子どもたちのつらさを受け止めようとしている。どうしてもつらさを打ち明けられない場合、かかりつけの小児科医や精神科医に助けを求めることも考えてみよう。

子どもの異常を感じたときにどうすべきかまとめたTALK=国立成育医療研究センター「こどものSOS(助けて)に気づいていますか?」より

子どもの異常を感じたときにどうすべきかまとめたTALK=国立成育医療研究センター「こどものSOS(助けて)に気づいていますか?」より

 「思春期の子どもの抱えている悩みや『生きづらい』という感情は非常に多様で、当人たちも具体的に伝えるのに苦労している。『何となく生きづらい』と感じている子もいれば、リストカットなどの自傷行為に至ってしまう子、死に直進してしまう子まで出てくる」。多くの思春期の患者を診てきた国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)・こころの診療部の田中恭子部長は、対応の難しさをこう分析する。このような行動は段階を踏んで出るわけでもないし、必ずしも一方の方向に進むものでもないことが、周囲の対応を難しくしている。

 ◇周囲に訴えられない

 学校が始まれば、学業やクラブ活動などでストレスを感じる場面は出るだろうし、いじめや虐待などに直面させられるかもしれない。思春期の子どもがこのようなストレスにさらされた際には「どう解消していけばいいのか」という以前に、「何が自分に起きているのか、どうやって他人に伝えたらいいのか」ということさえ理解できないことが多い、と田中部長は話す。周囲に訴えることもできずに孤立した状態が続けば、適応障害の状態に陥り、引きこもりや自傷行為、自死などに至ってしまうリスクが高くなってしまう。

 「このような状況に陥らせないためには、まずは保護者や教員、地域の大人などが子どもたちの変化に継続的に注意を払い、異常があれば積極的に語りかけることが大切だ」と田中部長は話す。このような子どもにどう向き合ったらよいか、多くの情報が公表されている。これらを踏まえて対応していけば、最悪の事態はかなりの確率で避けられるだろう。逆に、一方的な叱責や励ましなどは逆効果になることもある。子どものつらさを受け止め、じっくりと話を肯定的に聞く姿勢(傾聴)が求められる。

 ◇いざとなれば医療機関も

 大人が働き掛けても子どもがなかなか心を開いてくれなかったり、逆に周囲に親身になってくれる大人を見つけられない子どもがいたりするかもしれない。「どうにもならない場合は、かかりつけの小児科医に相談してみるのも一つの方法だ」と田中部長はアドバイスする。特に追い詰められた状態であれば治療やカウンセリングが必要な場合もあるため、適切なケアが期待できるからだ。日本小児科医会はホームページ内に「子どもの心相談医検索」(https://www.jpeda.or.jp/cgi/sp/index.cgi?c=member-counseling_list)を開設して相談に応じられる体制を整えている。

 高校生になると、小児科ではなく、成人を対象とする診療科に通う必要が出てくるかもしれない。「その場合は抵抗感があるだろうが、精神科や心療内科を受診してみてほしい。必要なら小児精神科に紹介してくれるだろうし、抱えているつらさを受け止め、親や教員など周囲の大人にも説明してくれるだろう。大人でも受診に抵抗を感じる人もいるが、今のつらさを一人で抱え込むくらいなら、一歩踏み出してほしい」と、田中部長は呼び掛けている。(喜多壮太郎)

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