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透析は、腎臓の代わりに血液中の過剰な水分や老廃物を取り除く医療。透析器を使って病院で行う血液透析(HD)が有名だが、腹膜透析(PD)という全く別の透析がある。
日本の透析患者のうちPDはわずか3%だが、東北医科薬科大病院(仙台市)腎臓内分泌内科の森建文教授は東日本大震災の経験から、災害に強いとして普及に努めており、「透析液の進歩などでPDの有用性は劇的に高まりました」と話す。
透析の種類による違い
◇血液透析は医療疎開必要
透析器と大量の水、電気を要するHDは、大規模災害発生時に継続が難しい医療の筆頭に挙げられる。2011年の東日本大震災では医療機関も大きな被害を受け、発生翌日の宮城県内の透析器稼働率は14%だった。当時、東北大病院にいた森教授は、家族の安否確認もままならない透析患者を、関東や北海道の施設に振り分ける仕事に追われた。
このとき目に留まったのが、避難所の片隅で自ら透析をするPD患者の姿。「PDならば透析医療疎開の必要がない。災害時の視点で透析のあり方を見直すべきです」
◇劇的に進歩
PDでは、HDでは透析器の中の透析膜が担う役割を患者の腹膜が行う。患者や家族が点滴の要領でバッグに入った透析液を腹腔(ふくくう)に入れると、浸透圧などの力で数時間かけて水分や老廃物が透析液に移行する。この古い透析液を腹腔内からバッグに取り出し、新しいものを注入する。
腹部に透析液の出し入れをするためのカテーテルを埋め込む手術が最初に必要になるが、1回30分ほどのバッグ交換を1日数回行うだけで済み、交換時間を除いた透析中は自由に生活できる。1回約4時間、週3回程度の通院が必要なHDと比べはるかに負担が少ない。
半面、PDには▽感染症を起こしやすい▽水分や老廃物を除去する力がHDより弱い▽次第に腹膜が劣化し5~10年しか続けられない―などの問題があった。それが普及を阻んだ理由だが、「最近の進化は著しい」。
紫外線殺菌装置の開発、腹膜への刺激が少ない透析液への移行など、問題点は解消されてきている。森教授はさらに、PDが患者自身による医療行為である意義を強調。「災害時に身を守るのは、自分の体の状態や飲んでいる薬についての知識です。日々、セルフケアを実践するPD患者は、災害時もうろたえずに病に向き合えるはずです」と述べている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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