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陰嚢(いんのう)が突然激しく痛んで腫れる急性陰嚢症の中でも、最も緊急性が高いとされる「精巣捻転症」。思春期に発症しやすく、受診や診断、処置が遅れると、精巣が壊死(えし)して機能を失う危険が高まる。
発症率は決して高くはないが、倉敷中央病院泌尿器科の井上幸治主任部長は「思春期の男子とその保護者は、精巣捻転症について知っておく必要があります」と話す。
ねじれが生じやすい「ベルクラッパー変形」
◇発症ピークは思春期
精巣捻転症は、精巣に血液を送る血管や精子の通り道(精管)を包む「精索(せいさく)」が突然ねじれ、精巣に血液が流れなくなる病気だ。
一番の原因は、精巣が生まれつき釣り鐘の鐘のようにぶらぶらと不安定に動く精巣固定の異常「ベルクラッパー変形」だ。この異常があると何らかの拍子にねじれが生じやすいと考えられている。
発症は思春期に多い。ピークは13~14歳で、精巣の成長もねじれを誘発する原因の一つだという。
主な症状は痛み。ある日突然、陰嚢に強い痛みが生じる。腹部の痛み、吐き気や嘔吐(おうと)を伴うこともあり「本人が精巣の痛みだと気付かない、あるいは気付いていても恥ずかしくて言い出せず、受診のタイミングや医師の診断、処置が遅れることがあります」。
ねじれによって血液が流れない時間が長引くと血流障害を来し、精巣の壊死(えし)を招きかねない。そのため発症から6~8時間以内の緊急処置が必要とされる。「24時間以上たってしまうと、基本的に手術で精巣を取り除くしかなくなります。一刻も早く専門医を受診することが重要です」
◇正常な精巣も固定
患者の多くは、過去に短時間で痛みが自然に治まった経験を持つことから、医師の問診では一過性の痛みの既往があるか尋ねられる。少しでも精巣捻転症が疑われると、緊急手術になる。
手術では陰嚢を切開してねじれを戻し、再発しないように縫合糸で精巣を内壁に固定する。その際「将来のねじれを防ぐために、ねじれや痛みのない正常な精巣も同時に固定するのが一般的です」。
精巣捻転症の治療は一刻を争う。いかに早く診断をつけて、手術を開始するかが精巣温存の鍵となる。一番の問題は恥ずかしさから思春期世代の受診に遅れが目立つことだ。井上部長は「痛みが引くのを待つのではなく、ちゅうちょせずに医療機関を受診してください」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/02/03 05:00)
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