嘔吐〔おうと〕 家庭の医学

 嘔吐は、胃腸の病気による場合や脳の病気など、他の病気によるものがあります。
 急性胃腸炎などでしばしばみとめられます。虫垂炎の初期症状は嘔吐の場合もあり、注意が必要です。長く続く場合は、食道の筋肉の動きの異常による食道アカラシア(胃と食道の間で通過障害が起き、食道が拡張する病気)のこともあります。
 ほかに特別な症状がなく、ただ吐くことがおもな症状の場合、女性では妊娠を念頭に置く必要があります。ヒステリーのような精神的なことでも嘔吐を伴い、神経質な人はちょっとしたことで嘔吐することがあります。
 脳の病気で脳圧が高くなると、頭痛と嘔吐を伴います。メニエール病という耳鼻科の病気では、嘔吐とめまいをうったえます。

■養生法
 嘔吐の原因をはっきりさせ、その治療を受けることが大切です。
 胃腸の病気が原因のときは、その治療をします。なにかの中毒で嘔吐した場合は、吐けるだけ吐いて出してしまうことが大切です。簡単な方法としては、指をのどに突っ込んで吐いてしまいます。
 胃腸症状のはっきりしない嘔吐の場合は、安静にして、刺激しないようにします。落ち着いてから水分から始めて、消化のよいものを食べます。嘔吐があると、からだから水分と電解質(でんかいしつ:ナトリウムやカリウムなどの電気を通す水溶性物質〈イオン〉)がうばわれて衰弱するので、まず水分を、ひどければ点滴によって水分と電解質を補給します。
 嘔吐をとめる薬もありますが、嘔吐を起こす原因をつきとめてその治療をすることが重要で、むやみに薬をのむことはよくありません。

(執筆・監修:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 名誉院長 大西 真)