治療・予防 2024/11/25 05:00
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赤ん坊は周囲の声を聞きながら言葉を学ぶが、難聴のために音が十分に聞こえない場合、こうした言葉の獲得が難しくなる。音を難聴児の脳に届けるための医療機器として、補聴器や人工内耳がある。小児の人工内耳について、東京医療センター(東京都目黒区)耳鼻咽喉科の南修司郎科長に聞いた。
耳の構造と人工内耳の仕組み
◇出生直後に聴覚検査
音は外耳、中耳を通って、さらに奥にある内耳の蝸牛(かぎゅう)で振動が電気信号に変換されて脳に届き音として認識される。難聴には外耳や中耳に問題があって音が伝わりにくい伝音難聴と、音は伝わっても内耳から脳までの問題で音を感じにくい感音難聴、両方が混在する混合性難聴があり、新生児では、遺伝子の変化や子宮内感染などによる感音難聴が多いとされる。
出生直後の新生児聴覚スクリーニング検査で難聴の疑いがあれば、専門の医療機関でさらに詳しく検査する。「新生児聴覚スクリーニングが受けられなかったり、スクリーニングでは難聴が認められず遅れて見つかったりする例もあります。そうした場合は1歳6カ月児、3歳児の健診で聞こえを確認します」と南科長は説明する。
◇早期の療育が重要
人工内耳は、音を集めて電気信号に変換する体外装置と、蝸牛内に電極を設置する体内装置から成り、手術で蝸牛に電極を挿入する。音の電気信号が蝸牛の電極で聴神経を刺激して脳に伝わる。言語聴覚士の下で患者ごとに最適な聞こえ方になるよう聴力検査をしながら、人工内耳を調整する「マッピング」を行う。
人工内耳の適応は、両耳の平均聴力レベルが90デシベル以上の重度難聴で、原則1歳以上か体重8キロ以上。これは養育者が音声言語を子どもの意思疎通法として選び、そのために人工内耳を利用しようと考えるときの基準だ。聞こえない、または聞こえにくい子どもの意思疎通法には多様な考え方があり、音声、手話、あるいはその両方を子どもの言語として選べるような配慮が重視されている。
「人工内耳を装着しても、すぐに音声言語が分かるわけではなく、適切な聴覚刺激を与えながら言葉の力を付けるための療育が欠かせません」。療育では、小学校就学までの難聴児の早期療育を専門に行う児童発達支援センターや、聴覚支援学校などが重要な役割を担う。
「聴覚を活用した早期からの適切な療育で、小学校の通常クラスでの学習に必要な音声言語力を獲得する子どもも多いです。難聴の早期発見と適切な介入で、子どもたちはより定型発達に近い形で言葉を獲得する可能性が高まります」と南科長は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/03/03 05:00)
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