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発達障害の一つである自閉スペクトラム症(ASD)は、対人関係の苦手さや物事への強いこだわりといった特徴が見られる。小学校5~6年生ぐらいから18歳ぐらいまでの児童期、思春期を対象とした新たな心理教育プログラム「ACAT(エーキャット)」を開発した、千葉大学子どものこころの発達教育研究センター(千葉市中央区)の大島郁葉教授に話を聞いた。
ACATのプロセス
◇告知されない傾向
ASDは1歳半を過ぎた頃から特性が表れることもある。自分で決めたルールやこだわりが強い、聴覚や触覚が過敏、場の空気を読みづらいなどの特徴があり、周囲を怒らせたりいじめに遭ったりして、不登校や引きこもりにつながる例もある。2013~16年に5歳児を対象に実施された研究では、ASDの有病率は3.22%と言われている。
大島教授によると、日本ではASDの診断をしても、告知をきちんとしない傾向がある。「医師が診断名を言わないケースがあります」。療育と呼ばれる治療教育の場でも、自分がASDと知らされないまま、人との関わりや社会生活に適応する訓練(認知行動療法)を受けている児童もいる。そのため本人は、みんなと同じように振る舞えない自分に劣等感を抱きがちだという。
◇特徴知り前向きに
従来の認知行動療法は、ストレスを感じた場面を振り返り、そのときの気持ちや体の反応、取った行動を明確にし、どのようなシーンでストレスを感じやすいか、それを回避するにはどのような行動を取ればよいかを学んでいく。
ACATはここに「ASDの特性を知る心理教育」「自分のASDの特性に気付く練習」「特性との楽になる付き合い方の習得」を加えている点が特徴だ。カウンセリングには親も同席し、どのような配慮や工夫をすれば生活しやすくなるかを図式化して、実行する。
「欧米では、未就学児童が自分のASDの特性について説明でき、ASDをポジティブに紹介する絵本もたくさん出版されています」。プログラムを受けると、精神的にも落ち着き、自分が周囲と違っていても前向きに捉える児童が多いという。
今後は、療育の場でもACATの積極的な活用を促し、30歳代くらいまでのASD患者にも適応を広げていく予定だ。「ASDの特性は、むしろその子の魅力だったり強みだったりします。ぜひ周囲も多角的な視点で理解を深めてほしい」と大島教授は呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/03/10 05:00)
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