自閉スペクトラム症〔じへいすぺくとらむしょう〕 家庭の医学

 対人関係など社会的な行動がうまくできない、行動や興味の対象が限られているなどの特徴があります。以前は、広汎性発達障害、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害などに分類されていましたが、それぞれが区切れるものでもないため、自閉スペクトラム症と一つになりました。社会参加に支障をきたすほど強い場合から、軽度の問題はあるものの通常の社会生活を送れる場合まであります。
 2~3歳ごろから気づかれます。男の子のほうが約4倍多く発症します。

[原因]
 一部の患者さんで、染色体の小さな変化や遺伝子異常が見つかっています。多くの遺伝子や環境的要因が関係して、脳の成長発達がうまくおこなわれずに起こると考えられています。

[症状]
 ほかの人と目を合わせられない、ことばを話さないか話せてもうまく使えず、質問に返事をしないか、適切に答えられなくて質問をそのままいい返すおうむ返しや、的はずれな返事をしたり、ひとり言をいったりします。
 ことば以外にも表情、身ぶりなどでの意思疎通がうまくできない、ほかの人の感情が理解できない、友達と遊べず、一人遊びをしているなどの社会性の欠如があります。ままごとなどの役割を決めた遊びや想像的な遊びも苦手です。
 また、行動や関心の対象が限定され、常に水遊びをしているとか、時計を見ているなど同じものに興味を示し、1日の行動も順序だてておこなわないとおちつかず、急に新しいことが始まるとおちつかなくなります。急に不安にかられたり衝動的な行動をし、パニックといわれる興奮状態になることもあります。てんかんを合併することもあります。一般に、話しことばに対する理解力にくらべ、見たものに対する記憶力や理解力は高いことが多いです。
 さわられることをいやがる、特定の音に過敏、あるいは痛みには強いなど、感覚過敏と鈍まもみられます。知的発達は正常のことも、遅れも伴うこともあります。おどろくべき記憶力や計算能力を示すこともあります。

[治療]
 遊戯療法、行動療法、教育、心理療法などがおこなわれています。療法士がその子にあわせた指導、療育をおこなう個別指導と、集団における療育の両者が必要です。
 幼児期では、遊びを通してコミュニケーションをとる練習、身体的接触や愛情表現を含めた親子、他人との交流を多くもつことが大切です。
 社会生活やほかの人とかかわる場面を想定して、各場面でどうあいさつしたらよいか、どういうふうに対応し行動していくかを一つひとつ教え、練習するソーシャルスキルトレーニングもおこなわれます。
 1日の行動をシステマチックに構築したりする認知行動療法のTEACCHプログラムや、認知行動療法、親子相互交流療法など、いろいろな療法が試みられています。
 学童期以降は、対人関係がうまくつくれないことからトラブルも多く、自信喪失したり、自傷行為や異常行動を起こすこともあり、心理療法や環境調整も重要です。パニックや衝動的な行動に対して薬物療法もおこなわれます。睡眠障害がある場合には、メラトニン製剤の内服もあります。

【参照】こころの病気:自閉症スペクトラム

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