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小さく生まれて体重が軽過ぎると、成人後期といわれる40歳以上になり、心臓の病気や糖尿病などにかかるリスクが高まる―。国立成育医療研究センターによる大規模調査に基づく研究で、こうした結果が報告された。研究グループの森崎菜穂・社会医学研究部長は「低体重だった場合は一層、健康維持に力を入れてほしい」と呼び掛けている。
国立成育医療研究センター提供
◇軽い体重で高止まり
1980年代から2000年にかけて、生まれてくる子どもの体重が大幅に軽くなった。森崎部長は「出生時に2・5キログラム未満の子どもの割合は、70~80年代は8~9%程度だったが、今は9・5%くらいで高止まりしている」と話す。出生時の低体重の人が成人した後、糖尿病や高血圧症のリスクが高いという海外の知見が90年代から2000年代にかけて続々と出てきた。今回の調査研究はそれを日本で確かめるのが目的で、初めての試みだ。
日本でも、「小さく生まれると、生活習慣病になりやすい」という声が産科医や小児科医らから上がっていたが、科学的証拠(エビデンス)が伴うデータはなかった。
◇糖尿病リスク、1・26倍に
調査は秋田、岩手、茨城、千葉、長野、高知、愛媛、長崎の8県で、40~74歳の約11万5000人を対象に2011~16年に実施された。出生時の体重を1・5キログラム(kg)未満(極低出生体重児)、1・5~2・4kg(低出生体重児)、2・5~2・9kg、3~3・9kg、4kg以上のグループに分けて、心血管疾患や生活習慣病との関連を探った。
その結果、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患のリスクが出生体重3kg台の人に対し低出生体重児は1・25倍、極低出生体重児では1・76倍に高まることが分かった。
森崎部長によると、極低出生体重児の割合は1~2%、低出生体重児が8~9%、正出生体重児(2・5~3・9キログラム)が約90%と推定されている。低出生体重児の増加は若い女性の痩せ志向や「小さく産んで大きく育てるのが良い」とされた風潮が影響しているという。一方で4kg以上(巨大児)は0・1%未満とされ、米国などと比べて少ない。 これは難産になることを避けるため、早めに分娩(ぶんべん)することが原因だ。さらに研究では、出生体重と生活習慣病との関連が初めて明らかになった。
高血圧を経験した人の割合を見ると、3kg台の出生児に比べ、低出生体重児1・08倍、極低出生体重児1・29倍となっている。
この傾向は、糖尿病を経験したことがある人の割合でも変わらない。低出生体重児は3kg台出生児との比較で1・26倍、極低出生体重児は同1・53倍と高く、出生時の体重が軽いと糖尿病に罹患(りかん)しやすいと考えられる。
国立成育医療研究センター提供
◇胎児の省エネがあだに
森崎部長は「 生まれつき糖尿病になりやすい体質の人たちはいる。ただ、遺伝子以外に胎児期の(栄養状態などの)環境も病気のなりやすさに影響を与えることが分かってきている」と話した上で、次のような考えを提示する。
「母親のおなかにいる時にエネルギー(栄養)が少ない状態だと、それでも生きていけるように体が小さくなる。いわば、効率的な省エネ体質になっているわけで、普通に食べていても食べ過ぎになり、糖尿病のリスクを高めるのではないか」
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