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出生時の低体重、成人後にリスク
~心筋梗塞や糖尿病が高比率―成育センター研究~

森崎菜穂・社会医学研究部長

森崎菜穂・社会医学研究部長

 ◇健康対策がより必要

 2024年度から始まる第5次国民健康づくり(健康日本21・第3次)では、脳血管疾患・心疾患による死亡率の減少や高血圧症の改善、糖尿病患者の増加抑制などが目標に含まれている。低体重で生まれた人は通常の体重で生まれた人以上に、糖尿病など生活習慣病のリスクに備える必要がある。

 森崎部長は「食事は塩分の摂取を控えめにし、魚や野菜を中心に取る。適度な運動をする。喫煙をしない。これらを徹底してやってほしい」と強調する。

 ◇母子手帳を保管する

 成人後に自分の出生体重を知ることは決して難しくない。母親の妊娠期から子どもの乳幼児期に関する重要な情報を管理する母子健康手帳には、出生時の体重がきちんと記載されている。母子健康手帳を保管しておくことが大事だ。

 ◇母体の痩せ方が影響

 低出生体重児らが高止まりしているのはどうしてだろうか?

 森崎部長は「分娩の予定日を決めることが増えていることも背景にあるのではないか」と指摘する。産む側の事情などによって妊娠期間が短くなることがあり、出生時の体重に影響するからだ。平均妊娠期間は最終月経開始日から40週間だが、これが38週間になると「赤ちゃんの体重は300グラムほど小さく(軽く)生まれてくる。この差は大きい」と森崎部長は言う。

 また、出産の後は元の体重に戻りにくいこともあって妊娠中の体重をコントロールし、太らないように気を付ける女性も多い。妊娠期間とともに、母体の痩せ方も低出生体重に影響している。

 日本産科婦人科学会が1999年に公表した「妊娠中毒症の栄養管理指針」では「妊娠中の適切な体重増加の推奨」が示され、これによる指導が妊婦の体重抑制につながった面もある。しかし、同学会は2019年、推奨値が妊娠による生理的な体重増加を下回っている可能性が危惧されることや、同指針による妊娠高血圧症候群の予防効果を支持する新たなエビデンスが乏しいことから、推奨を取り下げた。

 小さく生まれた人は骨が細く、筋肉量も少ないことが多く、太っていない。健診ではメタボ予防のために腹囲を測るが、体脂肪率は測らない。森崎部長は「今までのやり方だと、低出生体重で生まれた人はメタボでも健診で引っ掛からない。健診制度の見直しも今後の研究課題だろう 」と言う。(鈴木豊)

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