治療・予防

50人に1人が斜視
~子どもと高齢者に多く(京都大学大学院 宮田学講師)~

 斜視は、物を見る時の視線が左右どちらかの目でずれてしまう病気。見え方に立体感がない、物が二重に見えるなどの症状が出て、日常生活に支障を来すことが多い。京都大学大学院(京都市)眼科学の宮田学講師に聞いた。

斜視の主な種類

 ◇心理的な影響も

 通常は、両目で見た情報を脳で加算して、片目ずつよりよく見え、立体的にも見えるが、「斜視ではその機能が障害されるため、両眼の視力が下がったり、物を立体的に見ることができなくなったりします」。

 目が発達途上にある乳児で両眼視機能が障害されると、弱視眼鏡などで矯正できない低視力)になることがある。さらに、まぶしくて片目をつぶってしまったり、頭痛になったり、頭部が傾く斜頸(しゃけい)が見られたりする。後天的に発症した斜視では「物がだぶって見える複視が特徴的」だ。

 このため、道路の凹凸に気付かずつまずきやすい、運転中に前の車との距離感が分からないなど、生活に不都合が出る。また人付き合いを避けるなど、消極的になりがちという心理的な影響もあるという。

 斜視の場合、黒目の位置が左右で異なるため、周囲の人が気付くことが多いが、軽度の場合は眼科検査で発見されることがある。主な治療法は、光の進路を屈折させてずれを補正する「プリズムメガネ」の装用または手術がある。「先天性斜視で斜頸があれば5歳頃までに手術することをお勧めします」

 ◇専門の眼科医の受診を

 宮田講師らは、厚生労働省の匿名医療保険等関連情報データベースを用い、日本における斜視の患者数などを算出した。

 その結果、斜視の患者は2020年10月時点で約270万9200人、有病率は約2.2%で50人に1人と推定された。「国民病とされる心臓病に近い患者数。斜視は国民病の一つと言えます」。子ども(5~9歳)の有病率は6.0%に上った。高齢者は75~79歳で約2.6%、80~84歳で約2.8%、85~89歳で約2.5%だった。

 種類別では、視線が外側を向く「外斜視」が67.3%と最も多く、内側を向く「内斜視」は26.0%、上か下に向く「上下回旋斜視」は6.7%だった。

 「症状に心当たりがあれば、斜視を専門とする眼科医の受診をお勧めします」と宮田講師は呼びかける。専門の眼科医は日本弱視斜視学会ホームページに掲載されている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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