治療・予防

薬物療法が大きく進歩
~ぼうこうなどの尿路上皮がん(虎の門病院 三浦裕司部長)~

 尿路上皮がんは、尿の通り道である腎盂(じんう)、尿管、ぼうこう、尿道の内側の粘膜細胞から発生する。その薬物治療では、細胞の増殖を阻害してがん細胞を攻撃する殺細胞性抗がん剤が長年にわたり中心として使われてきたが、強い副作用などの課題がある。近年、免疫チェックポイント阻害薬などの登場で薬物療法は大きく変わりつつある。虎の門病院(東京都港区)臨床腫瘍科の三浦裕司部長に聞いた。

尿路上皮がんが発生する臓器

 ◇初期症状は血尿

 広範囲にわたる臓器で発生する尿路上皮がんだが、圧倒的に多いのはぼうこうがんだ。国立がん研究センターの調査によると、ぼうこうがんの罹患(りかん)数は2万3383人(2019年)で、男性が女性の約3倍に上る。

 尿路上皮がんの初期に多く見られる症状は血尿で、尿管にがんができると管がふさがり、感染を起こして発熱したりする。腎盂がんは大きくなるまで症状が出にくいという。

 がんの治療法は、手術、薬物、放射線が柱だが、「がんが他の臓器に転移した場合は殺細胞性抗がん剤による薬物療法が中心です。転移はなくても、がんが進行して粘膜の下の筋層を越えると、がん細胞が全身に回る可能性があるため手術の前後に薬物療法を行うこともあります」と三浦部長は説明する。

 ◇抗がん剤も世代交代

 尿路上皮がんの薬物治療は、シスプラチンとゲムシタビンの2種類の殺細胞性抗がん剤を組み合わせて行う併用療法が代表的だ。しかし、シスプラチンは吐き気・嘔吐(おうと)、腎障害などの強い副作用があるため、腎臓や心臓の機能が低下している高齢者などには使いにくく、同じ成分(白金)を含みシスプラチンに比べて副作用が軽いカルボプラチンが使われることがある。

 そうした中、薬物療法は1990年代以降目覚ましい進歩を遂げ、2017年に免疫チェックポイント阻害薬が尿路上皮がんに使えるようになった。

 人の免疫機構はがん細胞を異物として攻撃するが、過剰な免疫反応を抑える仕組みもある。その一つが免疫チェックポイントで、がん細胞はそれを利用して免疫の攻撃にブレーキをかけ増殖しようとする。そのブレーキを外すのが免疫チェックポイント阻害薬だ。

 また、21年に登場した抗体薬物複合体という種類の治療薬は、免疫細胞が産生する抗体に強力な殺細胞性抗がん剤を装備してがん細胞をピンポイントで攻撃する。三浦部長は「尿路上皮がんの薬物治療は間もなく、免疫チェックポイント阻害薬、抗体薬物複合体が主流になるでしょう。さらに、がんの原因となる遺伝子変異を標的にした薬剤の開発にも期待が高まります」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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