治療・予防

新しい治療法も―鼻腔腫瘍
~出血抑え、機能を温存(東京慈恵会医科大学付属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科 大村和弘診療医長)~

 鼻の内部や周囲の副鼻腔(びくう)の空洞にできる鼻腔腫瘍は、鼻が上顎や目、脳にも隣接しているため、進行によっては耳鼻咽喉科以外での診断や治療が必要になる。東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)耳鼻咽喉・頭頸部外科の大村和弘診療医長は「合併症や再発が少ない新しい手術法が確立されています」と話す。

鼻血は自覚症状の一つ

 ▽鼻血や鼻詰まり

 鼻腔腫瘍は、良性と悪性(がん)がある。良性の代表は、内反性乳頭腫や血管腫などで、悪性は扁平(へんぺい)上皮がんや腺がんなどの多様ながんができる。大村医師は「内反性乳頭腫のように、良性腫瘍でも約9%の確率でがんを合併することもあります。こうした病型と診療領域の複雑さが、治療の遅れにつながることがあります」と指摘する。

 自覚症状は鼻血や鼻詰まりで、脳や目などに腫瘍が広がると、顔面の圧迫感を伴うことがある。診断は、コンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)、組織を顕微鏡で調べる病理の検査結果で、腫瘍の進行度や悪性度を評価する。

 ▽治療は他科と共同も

 治療は手術が基本だ。顔面を切開する方法は風貌やかみ合わせが変わることがあり、近年では内視鏡手術が積極的に行われている。さらに悪性の場合は、進行度により手術前後に放射線や抗がん剤治療を組み合わせる。

 内視鏡手術は、腫瘍を分割して吸引する方法が標準的だ。しかし、腫瘍を根元から切除するまでに出血量が増える。しかも悪性の場合、完全に切除できたか確認できず、放射線や抗がん剤治療を加える必要が出てくる。

 そこで大村医師は、腫瘍を分割せずに摘出する内視鏡手術の方法を考案し、実践しているという。切除した腫瘍が悪性か否かを病理医が詳細に調べ、悪性なら切除できているかも評価する。「出血量が少なく、悪性の場合は追加治療をなくすことも可能です」

 腫瘍が脳に達するような手術では、脳外科や形成外科、眼科など他科の医師と治療に取り組み、手術後の合併症を最小限にするために麻酔方法にもこだわる。同病院では鼻腔腫瘍の総合的な治療体制が組まれ、患者への負担を大幅に軽減して早期回復を図っている。

 大村医師は「全てのケースに実施できるわけではありませんが、内視鏡を使って腫瘍をひとかたまりで摘出するという治療選択肢があることを、多くの人に知ってもらいたいです」と強調している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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