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女性の尿漏れ
~原因と改善方法~ 【第6回】

 40代以上の女性のおよそ2人に1人が経験すると言われる尿漏れ。若い頃には考えられなかった症状に戸惑い、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。尿漏れは誰にでも起こり得る身近な問題であり、適切な対策によって改善できる場合も多くあります。

 このコラムでは原因と改善方法を詳しく解説します。尿漏れで悩む方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

40代以上の女性の約半数が尿漏れを経験(イメージ画像)

40代以上の女性の約半数が尿漏れを経験(イメージ画像)

 ◇40代以上の2人に1人

 尿漏れは決して恥ずかしいことではありません。40代以上の女性の約半数にも上るのですから、あなたの周りにも同じ悩みを抱える女性がたくさんいるのです。尿漏れは加齢とともに増えていく傾向にありますが、適切なケアをすれば改善できます。

 ◇主因は骨盤底筋の衰え

 主な原因は尿道を支える骨盤底筋の筋力低下にあります。加齢による衰え、肥満による骨盤底への負担増加、出産時の骨盤底筋の伸び切りなどがリスク因子となります。さらに、更年期に伴うホルモンバランスの変化も骨盤底筋を弱くする一因です。

 失禁に3タイプ

 尿漏れには大きく分けて三つの種類があります。どのタイプなのかを知ることが、適切な対策を取るために重要です。

 1. 腹圧性

 一つ目は「腹圧性尿失禁」です。くしゃみをしたり、大笑いしたり、重い荷物を持ち上げたり、ジャンプしたりした時に、おなかに力が入ってぼうこうを圧迫することで起こります。骨盤底筋が弱くなっていると圧力に耐えられずに尿が漏れてしまうのです。

 2. 切迫性

 二つ目は「切迫性尿失禁」です。トイレに間に合わないほど急に尿意を感じた時に起こります。ぼうこうが過敏になっていたり、ぼうこうの筋肉が弱くなっていたりすることが原因です。寒さなどの刺激でも起こりやすくなります。

 3. 混合性

 三つ目は「混合性尿失禁」です。腹圧性と切迫性の両方の症状が表れます。くしゃみなどの腹圧がかかったときだけでなく、急な尿意の際にも漏れてしまうのです。

椅子に座りお尻の穴を締めることで骨盤底筋を鍛える(イメージ画像)

椅子に座りお尻の穴を締めることで骨盤底筋を鍛える(イメージ画像)

 ◇「肛門締める」筋トレが有効

 改善の第一歩は骨盤底筋を鍛えることです。この筋肉は尿道を支える重要な役割を持ち、弱ると尿漏れを起こしやすくなります。

 トレーニングの基本は、あおむけの状態で肛門を締めるように骨盤底筋に力を入れ、5〜10秒キープする方法です。寝る前のベッドでもできます。1日3セット程度行うとよいでしょう。

 椅子に座った状態でも、お尻の穴を締めるようにすれば骨盤底筋を鍛えられます。最初は難しく感じるかもしれませんが、慣れてきたら座った姿勢だけでなく、立って家事をしているときや信号待ちの隙間時間などに、なるべくコツコツと続けることがポイントです。尿漏れの専門外来もありますが、最近はYouTubeで専門家の動画も数多く配信されているので利用するとよいでしょう。

 骨盤底筋の運動以外にも器具や手術による治療法もあります。症状に応じて専門家に相談し、適切な方法を選んでください。

 ◇一人で悩まず、早く対策を

 尿漏れは女性にとって切実な悩みです。しかし、正しい知識を持ち対策を講じれば、必ず改善できる問題でもあります。恥ずかしがらずに自分の体と向き合い、専門家にも相談してみてください。早めの対応が大切です。

 日常のちょっとした習慣の改善から始めましょう。きっと尿漏れの悩みとさよならできます。一人で抱え込まず、適切なサポートを受けるようお勧めします。(了)

沢岻美奈子(たくし・みなこ)
 琉球大学医学部を卒業後、産婦人科医として25年以上の経歴を持つ。2013年1月、神戸市に女性スタッフだけで乳がん検診を行う沢岻美奈子女性医療クリニックを開院。院長として、乳がんにとどまらず、女性特有の病気の早期発見のための検診を数多く手掛ける。女性のヘルスリテラシー向上に向け、診察室での患者とのやりとりや女性医療の正しい知識をインスタグラムで毎週配信している。
 日本産科婦人科学会専門医、女性医学学会認定医、マンモグラフィー読影認定医、乳腺超音波認定医、オーソモレキュラー認定医。漢方茶マイスター。

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