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進歩続くパーキンソン病治療
運動療法、早期から継続を―国立精神・神経センター

 発症すると手足が震えたり、動きがゆっくりになったりするパーキンソン病。完治が難しく、進行してしまうと車いすや寝たきりの生活になる恐れがある神経難病だ。だが、治療は近年、目覚ましい進歩を続け、患者の生活の質(QOL)向上に寄与している。その柱になるのは、患者に合った抗パーキンソン薬とリハビリテーションの運動療法だ。

 ◇70歳以上100人に1人

 研修会で治療の最新事情を説明する村田美穗院長=1月6日
 「今は、発症しても7~8年は普通に動けるのが当たり前という時代。そうなるよう治療しなければなりません」。国立精神・神経医療研究センター病院(東京都小平市)で初めて開かれた「パーキンソン病運動療法研修会」。パーキンソン病治療の専門家である村田美穂院長は、東京を中心に各地から集まった理学療法士や作業療法士、看護師、医師らを前に、適切な治療のあり方を説いた。

 パーキンソン病は脳幹の「中脳」から出る神経伝達物質の一種、ドーパミンが減少し、運動の指令が体にうまく伝わらなくなって起きる病気。40歳以下でもまれにかかるが、患者の大半はシニア世代だ。患者の割合は加齢とともに増え、70歳以上では大体、100人に1人に見つかっている。

 患者には「四大症状」と呼ばれる特徴がある。動作が遅くなり、少なくなる(動作緩慢・無動)手足やあごなどが震える(安静時振戦)筋肉が強張る(筋強剛)体のバランスが悪く、倒れやすくなる(姿勢反射障害)といった運動症状だ。便秘や不安・抑うつといった非運動症状を伴うこともある。

 腰が曲がって前かがみの猫背になったり、体が片方に傾いたりして、最初は整形外科に行く患者も多い。だが、望ましいのはできるだけ発症早期の段階に、神経内科などの専門医を受診し、治療を始めることだ。

 「早期発見に最も重要なポイントは、動きがゆっくりになることで、次いで手足などの震え。姿勢反射障害はある程度進行してから症状が出る」と村田院長。他の病気で服用した薬の副作用や脳梗塞などの影響で似た症状を示す「パーキンソン症候群」の可能性はないか、といった点などを、脳や心筋の画像検査も使って見極め、診断が下される。

 ◇「平均寿命はほぼ同じ」

 2017年の米アカデミー賞授賞式に出席したマイケル・J・フォックス。発症から20年以上たって俳優に復帰するなど患者に勇気を与えた(EPA=時事)
 パーキンソン病はかつては、発症から7年程度で死亡するといわれた。だが、不足するドーパミンに変化するレボドパ製剤(Lドパ)やドーパミンの作用を補うためのドーパミン受容体刺激薬(ドーパミンアゴニスト)の開発により、治療環境は1980年代以降、大きく変わった。

 近年も新しい薬が登場し、手術療法を含めた治療の選択肢は増え、「患者の平均寿命はパーキンソン病でない人とほぼ同じ」(村田院長)といわれるほどになった。発症から12~15年たっても、4割は趣味やボラティア活動を行っているとの調査報告もある。

 ただし、服薬と並ぶ治療の柱と位置付けられる運動療法は、まだまだ十分に行われていないケースが多く、改善の余地が大きい。「効果があるので、日常的に続ける必要がある。そのことに、もっと気づいてほしい」と同病院身体リハビリテーション部の小林庸子医長は強調する。

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