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ギャンブル依存症は、スリルを好む性格の人がなりやすいと考えられてきた。しかし、ギャンブル依存症患者の脳の動きを調べた京都大学医学部付属病院(京都市)精神科神経科の高橋英彦准教授は「リスクを適切に測ることができない脳の障害です」と強調する。
ギャンブル依存症は脳に問題
▽判断能力が低下
競馬やパチンコなどの衝動を抑えられずに借金が重なって、家庭崩壊を招いても繰り返すギャンブル依存症。ギャンブルへの強い渇望、いらいらや手の震えといった禁断症状、賭け金と頻度の増加、よりリスクの高いギャンブルへの傾倒などが主な症状だ。負けた分を取り返そうと深追いする傾向も強い。
人間は普通、状況に応じてリスクを評価し、リスクとリターンが見合うよう適切な行動を取ろうとする。高橋准教授らの研究グループは、ギャンブル依存症患者はこの能力に障害があるのではないかと仮説を立て、実験を行った。
研究グループは、ギャンブル依存症の男性21人とそうではない男性29人に新たに考案したギャンブルをしてもらいながら脳の活動を調べた。ギャンブルは高リスク・高リターンのものと低リスク・低リターンのものを用意、両方を次々提示、参加者に自分の好みの方を選択することを繰り返させた。また、ギャンブルで獲得する点数の目標も設け、両方のギャンブルをうまく組み合わせないと目標点数に達することができないようにした。
▽治療法開発に期待
高橋准教授は「実験の結果、健常者は目標点数が低い場合は、リスクの少ないギャンブルを選びました。それに対して、ギャンブル依存症で治療期間が3カ月以内の患者は、目標点数が低くても高リスクなギャンブルを選択しました」とする。
ギャンブル依存症患者の脳の活動状況を「機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)」で調べたところ、目標点数の厳しさやリスクを正しく認識する「背外側前頭前野」という部分の活動が低下していた。背外側前頭前野はリスク評価の際、選択した結果を予測する「内側前頭前野」と協調して活動するが、治療期間の短い患者はこれらの働きがうまく結び付いていなかったという。
高橋准教授は「実験の結果、ギャンブル依存症は性格が原因ではなく、脳神経の障害であることが分かりました。ギャンブル依存症への理解が広がり、新たな治療法開発につながると期待されます」としている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2018/12/19 06:00)
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