小児外科及び小児内視鏡外科において国際的にも最高レベルの臨床医であり、教育者でもある。年間手術総数は約1,100例、新生児手術総数約60例、内視鏡手術約250例と国内最多であり、かつ全国からの難症例を受け入れている同院の小児外科・小児泌尿生殖器外科の主任教授を務める。とくに、胆道閉鎖症に対する腹腔鏡下葛西手術、嚢胞性肺疾患に対する完全胸腔鏡下肺葉切除術は、国内外から高い評価を受けている。近年は、先天性胆道拡張症や腎盂尿管移行部狭窄症、縦隔腫瘍に対して、ダヴィンチを用いたロボット支援手術を行っている。尿道下裂の手術においては、山高医師が独自に考案した外精筋膜で新尿道を被覆補強する術式は、合併症が格段に少ないため尿道下裂の欧文手術書にも採用され、国際的にも高く評価されている。「この子が我が子なら」ということをつねに念頭において治療に当たり「幼弱な小児にこそ安全かつ侵襲の少ない治療を」と腹腔鏡・胸腔鏡・後腹膜鏡手術、ロボット支援手術に積極的に取り組んでいる。
日帰り手術専門クリニックの東京外科クリニックを創設し、2024年から同院院長として勤務。手術看護認定看護師を迎え、三位一体で取り組み「日帰りの腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術が当たり前の時代を創るべく研鑽を続けております」(山高医師)
山高篤行 医師 やまたかあつゆき
東京外科クリニック
東京都千代⽥区神⽥⼩川町2-6 ⼤宮第⼆ビル2階
- 外科
- 院長
専門
小児外科、小児泌尿生殖器外科を専門とし、特に小児腹腔鏡・胸腔鏡手術に力を入れおり、近年はロボット支援手術を行っている。新生児外科全般、胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症、Hirschsprung’s病、尿道下裂、腎盂形成術などに精通。
医師の紹介
診療内容
同科は1968年(昭和43年)4月、日本の医療機関で最初の小児外科学講座として誕生して以来、国内外で小児外科医療のリーダーシップをとり続けている。
「患者さんの気持ちを考え、安全で確実な医療を提供する」ことをモットーに、主任教授である山高医師のもと、小児外科学会認定指導医・専門医の7名を含む合計20名のスタッフが、豊富な経験と優れた技術を用い、心を込めて安全・確実に治療することを使命として日々診療に当たっている。
同科は術後の痛みの軽減・早期回復に配慮した腹腔鏡・胸腔鏡・後腹膜鏡・ロボット支援手術などの低侵襲外科治療において国際的にも群を抜いた存在であり、小児外科の最先端治療の拠点として国内外に知られている。
年間手術件数(全身麻酔下)は約1,100例と全国平均の250例を上回り、新生児外科症例数は50~60例(全国平均15例)と国内では最も多くの手術症例数を誇り、小児外科病床数は41床と大学病院として日本最大規模である。国内でいち早く取り組んできた腹腔鏡・胸腔鏡手術も200~250例とその割合が大きいことも同科の特徴である。同科の患者の約8割は全国の基幹病院や開業医、診療所等からの紹介症例であり、外科疾患を持つ子供たちを一刻も早く治療するには「病病連携」「病診連携」などの医療連携が欠かせないという。同院のように小児外科専門医や指導医が何人もいて設備の整った施設は極めて稀であり、救急患者に対しても全国でも類を見ない24時間体制で対応しており、夜間・休日・祭日は当直医の他に常勤指導医を含む3名が常時待機し、確実な診断・安全な治療を提供している。
2007年には小児外科・小児泌尿生殖器外科、小児科・思春期科、産科の3科を中心とした「小児科・小児外科・周産期母子メディカルセンター(旧名母子医育支援センター、現在の名称は周産期センター)」を開設。小児科と産科との更なる協力体制のもと、患者の治療とその家族の支援に貢献している。
同科が扱う疾患は小児(新生児から中学生まで)の手術を必要とする疾患で、腹部消化器外科、肝・胆・膵外科、肺・縦隔外科、泌尿生殖器外科、頭頸部外科、体表外科など多岐にわたり、心臓、脳、骨、眼を除く身体のほぼ全域を治療している。そうした幅広い分野にわたる治療は小児科・思春期科、産科だけでなく、脳神経外科、心臓血管外科、形成外科、眼科、耳鼻咽喉・頭頸部外科など各科との緊密な協力体制のもとに行われており、同院のスペシャリストの力が結集した高度なチーム医療が支えているといっても過言ではない。山高医師の治療方針は「この子が自分の子供なら、どのように診断し、いかなる手術を選択し、どのように術後管理を行うかを考えていく」ことであり、このことをつねに念頭に置き治療に当たっている。我が子と思えば自ずとそこには必死さがあり、切実さ、真剣さが伴ってくる。
つねに真剣に命に向き合う山高医師がとくに力を入れるのは低侵襲外科手術(腹腔鏡・胸腔鏡・後腹腔鏡、ロボット支援手術)である。低侵襲手術はこれまでの開腹・開胸手術に比べて手術のあとに残る傷が小さいこと、術後の痛みが少ないなど患者の身体的負担が少なく、回復も早いなど大きなメリットがあり、日本では1990年代から成人に対して急速に普及した。同科では「幼弱な小児にこそ、その低侵襲性であるというメリットが適応されるべき」という前教授である宮野 武 順天堂大学名誉教授の考え方から、他の施設に先駆けて低侵襲手術に積極的に取り組んできた。山高医師は宮野教授の意志を引き継ぎ、小児外科の種々の疾患に対して安心で安全な低侵襲外科を確立させており、その果たした功績は大きい。さらに、近年は先天性胆道拡張症、腎盂尿管移行部狭窄症、縦隔腫瘍に対して、ロボット支援手術を行ない、極めて精度の高い手術を成功させている。
また、繊細で高度な技術が要求される手術の1つに尿道下裂に対する尿道形成術がある。高い頻度で術後合併症が起こるため、熟練した小児外科医・小児泌尿器科医による治療が必要になる。世界中の外科医が合併症を少なくする方法を考案しており、術式が200以上もある。山高医師は合併症発生率が極めて少なく、また予後良好な新たな手術法を考案し、国際的にも高く評価されている。また、同科では他施設で手術が施行されたものの合併症が生じた難症例に対する再手術も行っている。
膀胱尿管逆流に対しても山高医師が中心となり、国内ではいち早く膀胱鏡下での手術を採用している。従来の膀胱を切開する手術では、術後の膀胱攣縮による疼痛がしばしば問題となる。欧米では「Deflux法」という膀胱鏡下での手術法が積極的に行われており、奏功率は70%から90%と通常の開腹手術にやや劣るものの、その低侵襲性、術後疼痛が殆どないことから、早期退院が可能になるなどメリットも多く、同科では積極的に行っている。
同科では日帰り手術に関しても積極的で、2歳以上の小児の鼠径ヘルニア(陰嚢水腫)などのマイナー手術を対象に行っている。手術や麻酔の方法をはじめ、それを行うスタッフも入院手術と同様に行われ、同科のスタッフはもとより麻酔科・ペインクリニック、外来、病棟、手術室のスタッフ全員が、患者が安全かつ安心して日帰り手術を受けられるよう万全の体制を整えている。
手術当日は患者や家族は小児病棟内の個室を使用でき、入院したほうが安全と考えられる場合は、そのまま入院に切り替えることもできる。帰宅後に問題が生じた場合にも直ちに同院で対応するシステムがある。日帰り手術は土曜日(第2土曜日を除く)午前9時から行われ、手術日は外来にてあらかじめ決定される。
“小児にこそ低侵襲で安全・安心な手術を“という同科の方針は細部にまで行き渡っており “体内に異物を残さない”ということもその1つである。
国内の施設では腸管膜の血管処理をする際に絹糸を使用することが多いが、絹糸のような「溶けない糸」が原因で組織反応、異物反応を引き起こし、術後感染症や肉芽組織形成による合併症等が報告されている。欧米では「手術部位感染防止ガイドライン (Guideline for prevention of surgical site infection)」に従い、極力「溶ける糸」が選択されている。
同科でも特殊な手術を除き、ほとんどの手術に「溶ける糸」を用い、感染などのさまざまなリスク(膿瘍形成・肉芽形成等)を回避している。また、Ligasureなどのシーリングデバイス(凝固するための機械)を使用し、感染術野で糸を使用しないなどの方法も積極的にとられている。
同科では出生前診断された新生児外科疾患については、産科・小児科 (新生児科)・小児外科から成る周産期チームをつくって母体と児の計画的なケアを提供している。とくに横隔膜ヘルニアに関しては低侵襲性と美容性、将来の胸郭の発達を考慮し胸腔鏡手術を行なっている。横隔膜ヘルニアは胎児期に横隔膜の形成が不完全であったために、腸・胃・脾臓・肝臓などが胸の中に上がってきてしまう疾患である。そのために肺が十分に発達できず低形成となり、生まれた後に呼吸困難を起こしてしまうため、生まれると同時に緻密な治療を開始する必要がある。ただ、横隔膜ヘルニアの児は呼吸状態がとても不安定なので、すべての児に胸腔鏡手術が行えるわけではない。そこで山高医師が中心になって日本はもとより、世界に先駆けて出生前診断を受けた横隔膜ヘルニア患児への内視鏡手術の適応基準 (成績については英文医学雑誌に発表 Okazaki T, Yamataka A, et al: Pediatr Surg Int. 27:35-38, 2011)をつくり、その基準に則り、安全な治療を行っている。特殊な人工呼吸器や吸入薬 (一酸化窒素)を使用するきわめて専門的な治療になるが、同センターでは日本でも最高水準の治療設備環境のもと、低侵襲外科治療における卓越した技能を持った医師とスタッフにより安心で安全な手術を実現している。
山高医師は優れた教育者としても知られ、後進の育成にも心血を注いでいる。「私は順天堂で外科のトレーニングを受け、外科医になりました。ですから、順天堂でどのようなトレーニングを受けて、どのように勉強すれば、実力ある真の小児外科医になれるかを知っている指導者です。日本国内のみならずアジア、世界のために小児を手術でしっかりと治療できる力のある小児外科医育成が私の責務と考えております」(山高医師)
小児、とくに新生児は臓器の形態・発達などが大人とは大きく異なるため、小児外科医には小児の外科疾患に対するきわめて専門的な知識や技術が要求される。それだけでなく、多くの臓器を扱っていることから、全身管理が習得できるというメリットがある。小児外科医を目指すことは、その専門性のみを追求するのではなく「Primary care (特定の病気だけでなく、患者1人を総合的に診る医療)を学ぶことにほかならない」と山高医師は言う。同科は日本で最も症例数が多く、多くの経験を積めるという点で教育においても最適の現場だといえる。
「百聞は一見に如かず」で山高医師は大学院生、研修医、そして医学部学生に対して定期的に、実際に動物を用いた腹腔鏡・胸腔鏡の手術手技トレーニングを行ってきた。こうした外科手術手技習得のための厳しい修練を行う一方で、よりグローバルな視野で医療が行えるよう海外留学を積極的に奨励している。“医局員が海外留学を通して世界を肌で感じることができること”は同教室の魅力の1つである。ほぼ全員が留学経験者であり、その国際医学情報をもとに、世界レベルの診療・教育・研究を絶えず維持している。山高医師自身は外科の開業医である父を持ち、自らも医師を目指し順天堂大学医学部に入学、大学時代はラグビーに没頭する。当時のラグビー部の監督は小児外科の2代目の教授(当時は講師)である宮野武名誉教授で、ラグビーはもとより、人間性、そして外科道の厳しさをとことん叩き込まれたという。
「ラグビーも手術も追求する姿勢に妥協はない」という監督の言葉に感銘を受け、小児外科を目指すことを心に決めたという。山高医師率いる同科は専門医、指導医の数とその医療水準のレベルでは超高度な技能集団であり、一滴の水ももらさぬチームワークを実現している点でラグビーと相通じる部分があるのかもしれない。
「優れた外科医は人には真似のできない自分の型を持っているものです。それは一朝一夕には身に付かず、日々の努力の果てにいつしか自分のものとなっているといったたぐいのものです。そんな優れた医師になるにはとにかく一歩一歩、小さなことを積み上げ、不断前進していくのみです。厳しい道ではありますが、今の若者たちもしっかりとした教育を提供すれば、十分に応えてくれます」(山高医師)
順天堂の学是は「仁」であり、それは「人ありて我あり、他を思いやり、慈しむ心」を意味する。170年にわたり連綿と受け継がれてきた順天堂の伝統の力が、若い医局員たちの大きな励みともなっているという。そうした次代を担う若い医師たちの一隅を照らす存在になれれば嬉しいと山高医師は語る。
「医師は自らの天職をよく承知していなければならぬ。ひとたびこの職務を選んだ以上、もはや医師は自分自身のものではなく、病める人のものである。もしそれを好まぬなら、他の職業を選ぶがよい」近代西洋医学教養の父ドクターポンペ ファン メールデルフォールトの言葉だが、山高医師は今もこの言葉を心に刻んで外科道にチャレンジし続けている。
【予防に心がけたいこと】
小児外科の領域では先天性疾患が多いため、現状では予防は難しいが、そうした疾患に対し、近年さまざまな手術法が開発され、進歩を遂げている。ただ、小児外科の手術は病変部位によっては極めて高度で、繊細かつ高度な治療技術が要求され、幼弱な小児への手術であるため身体に負担の少ない、安全で安心な手術である必要がある。そうしたことからも低侵襲手術が望ましいが、腹腔鏡・胸腔鏡手術は徹底したトレーニングを積むことで初めて可能となる技術であり、熟練した技術と経験が求められる。日本小児外科学会認定の専門医や指導医の資格を持ち、内視鏡外科(小児)技術認定医であることが望ましい。小児外科の専門医になるためには外科専門医を取得後にさらに数年、小児外科指導医になるには最短でも医学部卒業後15年の経験が必要である。また、泌尿器や生殖器の疾患ではとくに患者(患児)自身はもとより、家族の立場に立ったケアが必要である。治療設備が完備していることはもちろんだが、難しい手術であればあるほど前述した条件を満たす医療機関を選択することが重要である。
同時に小児外科疾患は成人になってからの経過観察や手術が必要な場合があるため、成人してからも継続して受診可能な医療機関が望ましい。順天堂医院の小児外科では、成人外科と協力して治療に当たることができ、成人外科病棟もあるため、長期にわたり診察していくことが可能である。また、横隔膜ヘルニアなど生まれてすぐに治療を開始しなければならない疾患については小児外科だけでなく、産科や小児科との協力体制のある医療機関で対応する必要がある。出生前診断により疾患がわかった時点で、こうした医療機関で母体と胎児について計画的に治療していくことが重要である。
こうしたすべての条件を満たすのが順天堂医院の小児外科・小児泌尿生殖器外科であり、特定機能病院(高度な医療を提供するとともに、高度の医療に関する開発・評価及び研修を行う病院)として全国の医療機関からの患者を受け入れている。
「患者さんの気持ちを考え、安全で確実な医療を提供する」ことをモットーに、主任教授である山高医師のもと、小児外科学会認定指導医・専門医の7名を含む合計20名のスタッフが、豊富な経験と優れた技術を用い、心を込めて安全・確実に治療することを使命として日々診療に当たっている。
同科は術後の痛みの軽減・早期回復に配慮した腹腔鏡・胸腔鏡・後腹膜鏡・ロボット支援手術などの低侵襲外科治療において国際的にも群を抜いた存在であり、小児外科の最先端治療の拠点として国内外に知られている。
年間手術件数(全身麻酔下)は約1,100例と全国平均の250例を上回り、新生児外科症例数は50~60例(全国平均15例)と国内では最も多くの手術症例数を誇り、小児外科病床数は41床と大学病院として日本最大規模である。国内でいち早く取り組んできた腹腔鏡・胸腔鏡手術も200~250例とその割合が大きいことも同科の特徴である。同科の患者の約8割は全国の基幹病院や開業医、診療所等からの紹介症例であり、外科疾患を持つ子供たちを一刻も早く治療するには「病病連携」「病診連携」などの医療連携が欠かせないという。同院のように小児外科専門医や指導医が何人もいて設備の整った施設は極めて稀であり、救急患者に対しても全国でも類を見ない24時間体制で対応しており、夜間・休日・祭日は当直医の他に常勤指導医を含む3名が常時待機し、確実な診断・安全な治療を提供している。
2007年には小児外科・小児泌尿生殖器外科、小児科・思春期科、産科の3科を中心とした「小児科・小児外科・周産期母子メディカルセンター(旧名母子医育支援センター、現在の名称は周産期センター)」を開設。小児科と産科との更なる協力体制のもと、患者の治療とその家族の支援に貢献している。
同科が扱う疾患は小児(新生児から中学生まで)の手術を必要とする疾患で、腹部消化器外科、肝・胆・膵外科、肺・縦隔外科、泌尿生殖器外科、頭頸部外科、体表外科など多岐にわたり、心臓、脳、骨、眼を除く身体のほぼ全域を治療している。そうした幅広い分野にわたる治療は小児科・思春期科、産科だけでなく、脳神経外科、心臓血管外科、形成外科、眼科、耳鼻咽喉・頭頸部外科など各科との緊密な協力体制のもとに行われており、同院のスペシャリストの力が結集した高度なチーム医療が支えているといっても過言ではない。山高医師の治療方針は「この子が自分の子供なら、どのように診断し、いかなる手術を選択し、どのように術後管理を行うかを考えていく」ことであり、このことをつねに念頭に置き治療に当たっている。我が子と思えば自ずとそこには必死さがあり、切実さ、真剣さが伴ってくる。
つねに真剣に命に向き合う山高医師がとくに力を入れるのは低侵襲外科手術(腹腔鏡・胸腔鏡・後腹腔鏡、ロボット支援手術)である。低侵襲手術はこれまでの開腹・開胸手術に比べて手術のあとに残る傷が小さいこと、術後の痛みが少ないなど患者の身体的負担が少なく、回復も早いなど大きなメリットがあり、日本では1990年代から成人に対して急速に普及した。同科では「幼弱な小児にこそ、その低侵襲性であるというメリットが適応されるべき」という前教授である宮野 武 順天堂大学名誉教授の考え方から、他の施設に先駆けて低侵襲手術に積極的に取り組んできた。山高医師は宮野教授の意志を引き継ぎ、小児外科の種々の疾患に対して安心で安全な低侵襲外科を確立させており、その果たした功績は大きい。さらに、近年は先天性胆道拡張症、腎盂尿管移行部狭窄症、縦隔腫瘍に対して、ロボット支援手術を行ない、極めて精度の高い手術を成功させている。
また、繊細で高度な技術が要求される手術の1つに尿道下裂に対する尿道形成術がある。高い頻度で術後合併症が起こるため、熟練した小児外科医・小児泌尿器科医による治療が必要になる。世界中の外科医が合併症を少なくする方法を考案しており、術式が200以上もある。山高医師は合併症発生率が極めて少なく、また予後良好な新たな手術法を考案し、国際的にも高く評価されている。また、同科では他施設で手術が施行されたものの合併症が生じた難症例に対する再手術も行っている。
膀胱尿管逆流に対しても山高医師が中心となり、国内ではいち早く膀胱鏡下での手術を採用している。従来の膀胱を切開する手術では、術後の膀胱攣縮による疼痛がしばしば問題となる。欧米では「Deflux法」という膀胱鏡下での手術法が積極的に行われており、奏功率は70%から90%と通常の開腹手術にやや劣るものの、その低侵襲性、術後疼痛が殆どないことから、早期退院が可能になるなどメリットも多く、同科では積極的に行っている。
同科では日帰り手術に関しても積極的で、2歳以上の小児の鼠径ヘルニア(陰嚢水腫)などのマイナー手術を対象に行っている。手術や麻酔の方法をはじめ、それを行うスタッフも入院手術と同様に行われ、同科のスタッフはもとより麻酔科・ペインクリニック、外来、病棟、手術室のスタッフ全員が、患者が安全かつ安心して日帰り手術を受けられるよう万全の体制を整えている。
手術当日は患者や家族は小児病棟内の個室を使用でき、入院したほうが安全と考えられる場合は、そのまま入院に切り替えることもできる。帰宅後に問題が生じた場合にも直ちに同院で対応するシステムがある。日帰り手術は土曜日(第2土曜日を除く)午前9時から行われ、手術日は外来にてあらかじめ決定される。
“小児にこそ低侵襲で安全・安心な手術を“という同科の方針は細部にまで行き渡っており “体内に異物を残さない”ということもその1つである。
国内の施設では腸管膜の血管処理をする際に絹糸を使用することが多いが、絹糸のような「溶けない糸」が原因で組織反応、異物反応を引き起こし、術後感染症や肉芽組織形成による合併症等が報告されている。欧米では「手術部位感染防止ガイドライン (Guideline for prevention of surgical site infection)」に従い、極力「溶ける糸」が選択されている。
同科でも特殊な手術を除き、ほとんどの手術に「溶ける糸」を用い、感染などのさまざまなリスク(膿瘍形成・肉芽形成等)を回避している。また、Ligasureなどのシーリングデバイス(凝固するための機械)を使用し、感染術野で糸を使用しないなどの方法も積極的にとられている。
同科では出生前診断された新生児外科疾患については、産科・小児科 (新生児科)・小児外科から成る周産期チームをつくって母体と児の計画的なケアを提供している。とくに横隔膜ヘルニアに関しては低侵襲性と美容性、将来の胸郭の発達を考慮し胸腔鏡手術を行なっている。横隔膜ヘルニアは胎児期に横隔膜の形成が不完全であったために、腸・胃・脾臓・肝臓などが胸の中に上がってきてしまう疾患である。そのために肺が十分に発達できず低形成となり、生まれた後に呼吸困難を起こしてしまうため、生まれると同時に緻密な治療を開始する必要がある。ただ、横隔膜ヘルニアの児は呼吸状態がとても不安定なので、すべての児に胸腔鏡手術が行えるわけではない。そこで山高医師が中心になって日本はもとより、世界に先駆けて出生前診断を受けた横隔膜ヘルニア患児への内視鏡手術の適応基準 (成績については英文医学雑誌に発表 Okazaki T, Yamataka A, et al: Pediatr Surg Int. 27:35-38, 2011)をつくり、その基準に則り、安全な治療を行っている。特殊な人工呼吸器や吸入薬 (一酸化窒素)を使用するきわめて専門的な治療になるが、同センターでは日本でも最高水準の治療設備環境のもと、低侵襲外科治療における卓越した技能を持った医師とスタッフにより安心で安全な手術を実現している。
山高医師は優れた教育者としても知られ、後進の育成にも心血を注いでいる。「私は順天堂で外科のトレーニングを受け、外科医になりました。ですから、順天堂でどのようなトレーニングを受けて、どのように勉強すれば、実力ある真の小児外科医になれるかを知っている指導者です。日本国内のみならずアジア、世界のために小児を手術でしっかりと治療できる力のある小児外科医育成が私の責務と考えております」(山高医師)
小児、とくに新生児は臓器の形態・発達などが大人とは大きく異なるため、小児外科医には小児の外科疾患に対するきわめて専門的な知識や技術が要求される。それだけでなく、多くの臓器を扱っていることから、全身管理が習得できるというメリットがある。小児外科医を目指すことは、その専門性のみを追求するのではなく「Primary care (特定の病気だけでなく、患者1人を総合的に診る医療)を学ぶことにほかならない」と山高医師は言う。同科は日本で最も症例数が多く、多くの経験を積めるという点で教育においても最適の現場だといえる。
「百聞は一見に如かず」で山高医師は大学院生、研修医、そして医学部学生に対して定期的に、実際に動物を用いた腹腔鏡・胸腔鏡の手術手技トレーニングを行ってきた。こうした外科手術手技習得のための厳しい修練を行う一方で、よりグローバルな視野で医療が行えるよう海外留学を積極的に奨励している。“医局員が海外留学を通して世界を肌で感じることができること”は同教室の魅力の1つである。ほぼ全員が留学経験者であり、その国際医学情報をもとに、世界レベルの診療・教育・研究を絶えず維持している。山高医師自身は外科の開業医である父を持ち、自らも医師を目指し順天堂大学医学部に入学、大学時代はラグビーに没頭する。当時のラグビー部の監督は小児外科の2代目の教授(当時は講師)である宮野武名誉教授で、ラグビーはもとより、人間性、そして外科道の厳しさをとことん叩き込まれたという。
「ラグビーも手術も追求する姿勢に妥協はない」という監督の言葉に感銘を受け、小児外科を目指すことを心に決めたという。山高医師率いる同科は専門医、指導医の数とその医療水準のレベルでは超高度な技能集団であり、一滴の水ももらさぬチームワークを実現している点でラグビーと相通じる部分があるのかもしれない。
「優れた外科医は人には真似のできない自分の型を持っているものです。それは一朝一夕には身に付かず、日々の努力の果てにいつしか自分のものとなっているといったたぐいのものです。そんな優れた医師になるにはとにかく一歩一歩、小さなことを積み上げ、不断前進していくのみです。厳しい道ではありますが、今の若者たちもしっかりとした教育を提供すれば、十分に応えてくれます」(山高医師)
順天堂の学是は「仁」であり、それは「人ありて我あり、他を思いやり、慈しむ心」を意味する。170年にわたり連綿と受け継がれてきた順天堂の伝統の力が、若い医局員たちの大きな励みともなっているという。そうした次代を担う若い医師たちの一隅を照らす存在になれれば嬉しいと山高医師は語る。
「医師は自らの天職をよく承知していなければならぬ。ひとたびこの職務を選んだ以上、もはや医師は自分自身のものではなく、病める人のものである。もしそれを好まぬなら、他の職業を選ぶがよい」近代西洋医学教養の父ドクターポンペ ファン メールデルフォールトの言葉だが、山高医師は今もこの言葉を心に刻んで外科道にチャレンジし続けている。
【予防に心がけたいこと】
小児外科の領域では先天性疾患が多いため、現状では予防は難しいが、そうした疾患に対し、近年さまざまな手術法が開発され、進歩を遂げている。ただ、小児外科の手術は病変部位によっては極めて高度で、繊細かつ高度な治療技術が要求され、幼弱な小児への手術であるため身体に負担の少ない、安全で安心な手術である必要がある。そうしたことからも低侵襲手術が望ましいが、腹腔鏡・胸腔鏡手術は徹底したトレーニングを積むことで初めて可能となる技術であり、熟練した技術と経験が求められる。日本小児外科学会認定の専門医や指導医の資格を持ち、内視鏡外科(小児)技術認定医であることが望ましい。小児外科の専門医になるためには外科専門医を取得後にさらに数年、小児外科指導医になるには最短でも医学部卒業後15年の経験が必要である。また、泌尿器や生殖器の疾患ではとくに患者(患児)自身はもとより、家族の立場に立ったケアが必要である。治療設備が完備していることはもちろんだが、難しい手術であればあるほど前述した条件を満たす医療機関を選択することが重要である。
同時に小児外科疾患は成人になってからの経過観察や手術が必要な場合があるため、成人してからも継続して受診可能な医療機関が望ましい。順天堂医院の小児外科では、成人外科と協力して治療に当たることができ、成人外科病棟もあるため、長期にわたり診察していくことが可能である。また、横隔膜ヘルニアなど生まれてすぐに治療を開始しなければならない疾患については小児外科だけでなく、産科や小児科との協力体制のある医療機関で対応する必要がある。出生前診断により疾患がわかった時点で、こうした医療機関で母体と胎児について計画的に治療していくことが重要である。
こうしたすべての条件を満たすのが順天堂医院の小児外科・小児泌尿生殖器外科であり、特定機能病院(高度な医療を提供するとともに、高度の医療に関する開発・評価及び研修を行う病院)として全国の医療機関からの患者を受け入れている。
診療を受けるには
予約優先、予約なしで受診可能。詳細はクリニックホームページ参照
医師プロフィール
1985年3月 順天堂大学医学部卒業
1985年6月 順天堂大学医学部附属順天堂医院外科研修医
1987年6月 順天堂大学医学部附属順天堂医院小児外科助手
1990年2月 英国Liverpool王立子供病院留学
1991年2月 英国London Great Ormond子供病院留学
1991年8月 豪州Brisbane王立子供病院及びPrincess Alexandra 病院留学
1992年3月 順天堂大学医学部附属順天堂医院助手
1993年1月 順天堂大学にて医学博士の学位取得
1994年7月 獨協医科大学第一外科講座助手
1995年7月 順天堂大学医学部小児外科学講座臨床講師
1996年3月 ニュージーランドOtago大学付属Wellington病院小児外科留学
1997年1月 順天堂大学医学部小児外科学講座講師
1999年1月 順天堂大学医学部小児外科学講座助教授
2006年8月-現在 順天堂大学医学部小児外科学講座主任教授
2012年12月-現在 東京医科大学消化器・小児外科学分野兼任教授
2016年 東京外科クリニック日帰り手術専門チームに参画
2024年 東京外科クリニック院長 順天堂大学医学部特任教授
1985年6月 順天堂大学医学部附属順天堂医院外科研修医
1987年6月 順天堂大学医学部附属順天堂医院小児外科助手
1990年2月 英国Liverpool王立子供病院留学
1991年2月 英国London Great Ormond子供病院留学
1991年8月 豪州Brisbane王立子供病院及びPrincess Alexandra 病院留学
1992年3月 順天堂大学医学部附属順天堂医院助手
1993年1月 順天堂大学にて医学博士の学位取得
1994年7月 獨協医科大学第一外科講座助手
1995年7月 順天堂大学医学部小児外科学講座臨床講師
1996年3月 ニュージーランドOtago大学付属Wellington病院小児外科留学
1997年1月 順天堂大学医学部小児外科学講座講師
1999年1月 順天堂大学医学部小児外科学講座助教授
2006年8月-現在 順天堂大学医学部小児外科学講座主任教授
2012年12月-現在 東京医科大学消化器・小児外科学分野兼任教授
2016年 東京外科クリニック日帰り手術専門チームに参画
2024年 東京外科クリニック院長 順天堂大学医学部特任教授
所属学会
【国際学会】太平洋小児外科学会(PAPS)、国際小児内視鏡外科学会(IPEG)、英国小児外科学会(BAPS)、アジア小児外科学会(AAPS)、欧州小児外科学会(EUPSA)、国際小児外科リサーチシンポジウム(ISPSR)、米国小児外科学会(APSA)、米国小児科学会 (AAP)
【国内学会】日本小児外科学会、日本小児泌尿器科学会、日本内視鏡外科学会、日本ロボット外科学会、日本外科学会、日本小児内視鏡外科・手術手技研究会、日本周産期・新生児医学会、日本二分脊椎研究会、日本膵・胆管合流異常研究会
【資格】
日本小児外科学会認定指導医・専門医、日本外科学会認定指導医・専門医、日本内視鏡外科学会技術認定取得者、日本小児泌尿器科学会認定医、臨床修練指導医
【国内学会】日本小児外科学会、日本小児泌尿器科学会、日本内視鏡外科学会、日本ロボット外科学会、日本外科学会、日本小児内視鏡外科・手術手技研究会、日本周産期・新生児医学会、日本二分脊椎研究会、日本膵・胆管合流異常研究会
【資格】
日本小児外科学会認定指導医・専門医、日本外科学会認定指導医・専門医、日本内視鏡外科学会技術認定取得者、日本小児泌尿器科学会認定医、臨床修練指導医
主な著書
※編集・共著含む
Yamataka A, Lane G, Cazares J: Congenital biliary dilatation, Pediatric Surgery: Vol.1: General Principles and Newborn Surgery, 1st Edition, Puri P, ed, Springer, New York, 1145-1163, 2020
Yamataka A, Miyano G, Azuma T: Laparoscopy-assisted pull-through for Hirschsprung disease, Atlas of Pediatric Laparoscopy and Thoracoscopy, 2nd edition, Holcomb GW, Rothenberg SS eds, Elsevier, London, 91-103, 2021
『スタンダード小児内視鏡外科手術 押さえておきたい手技のポイント』(2020年メジカルビュー社)
『標準外科学 第16版』(2022年 医学出版)
『今日の治療指針 2022』(2022年 医学書院)
『小児外科看護の知識と実際 (臨床ナースのためのBasic & Standard)』(2010年メディカ出版)
『最強ドクターの奇跡』(2008年 扶桑社)
Yamataka A, Lane G, Cazares J: Congenital biliary dilatation, Pediatric Surgery: Vol.1: General Principles and Newborn Surgery, 1st Edition, Puri P, ed, Springer, New York, 1145-1163, 2020
Yamataka A, Miyano G, Azuma T: Laparoscopy-assisted pull-through for Hirschsprung disease, Atlas of Pediatric Laparoscopy and Thoracoscopy, 2nd edition, Holcomb GW, Rothenberg SS eds, Elsevier, London, 91-103, 2021
『スタンダード小児内視鏡外科手術 押さえておきたい手技のポイント』(2020年メジカルビュー社)
『標準外科学 第16版』(2022年 医学出版)
『今日の治療指針 2022』(2022年 医学書院)
『小児外科看護の知識と実際 (臨床ナースのためのBasic & Standard)』(2010年メディカ出版)
『最強ドクターの奇跡』(2008年 扶桑社)
(更新日:2024年9月25日)