治療・予防

副甲状腺機能低下症
~遺伝性は指定難病にも(帝京大ちば総合医療センター 井上大輔病院長)~

 体内のカルシウム濃度を調整する副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌が低下し、足がつるなどの症状が引き起こされる副甲状腺機能低下症。「原因はさまざまです。多くは甲状腺の手術などにより発症する術後性ですが、それ以外には遺伝性の患者さんなどもいます」と帝京大ちば総合医療センター(千葉県市原市)病院長で内分泌代謝内科の井上大輔教授は話す。

副甲状腺は米粒大の臓器

副甲状腺は米粒大の臓器

 不整脈や抑うつも

 喉仏の下あたりに存在する甲状腺の裏に、左右二つずつ、計四つの米粒大の副甲状腺と呼ばれる臓器がある。主に、血液中のカルシウム濃度を上昇させるPTHを分泌する。何らかの原因で機能が低下すると、結果的に血液中のカルシウム濃度が低下し、テタニーと呼ばれる手足の筋肉のけいれん、手足や口周りのしびれ感などの症状が表れる。不整脈、抑うつなどが見られるケースもあるという。

 術後性を除いた患者数は約2300人とされ、遺伝性も含まれる。遺伝性で、中等度以上の症状があれば指定難病に認定される。

 「家族にこの病気の方がいるなど遺伝性の場合、より早い段階で検査が行われるようになり、幼少期に診断がつく患者も増えています」

 ◇新薬登場に期待

 ただ、症状が軽いなどで検査に至らず、成人後に診断される場合もあるという。「他の人に比べて手足の筋肉のけいれんが頻繁に起きるなど目立った症状があれば、かかりつけ医に相談して血液中のカルシウム濃度を測定してもらうことをお勧めします」

 活性型ビタミンD3製剤と呼ばれる飲み薬で、血液中のカルシウム濃度を正常に維持する治療法が主流。それだけで症状の緩和が難しければ、カルシウム製剤の併用が検討される。

 「これらの治療薬で多くの患者さんは症状の緩和が期待できます」。ただし、一部の患者では血液中のカルシウム濃度が必要以上に高まって腎臓からのカルシウム排せつが増加し、尿路結石や腎機能障害などの副作用が起きることがあり注意が必要だという。

 昨年12月には、体内のPTH濃度を正常範囲内に維持する効果が期待できる治療薬の製造販売承認が厚生労働省に申請されており、「承認されれば、従来の治療で副作用を抱える患者さんの新たな選択肢になるのでは」と井上教授は期待を寄せている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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