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水虫は日本人の5人に1人が患っていると言われ、現在も増加傾向にあるとされる。カビの一種「白癬(はくせん)菌」が原因の感染症で誰もが知っている病気だが、白癬菌が爪に入り込んでできる水虫「爪白癬」は完治が難しい。爪にできた「巣」から背中やお尻、顔などに拡散してカビが生える場合もある。
そんな爪白癬に関するセミナーが東京都内で開かれ、埼玉医科大学皮膚科の常深祐一郎教授は「内服薬を使った完全治癒を目指して欲しい」と力説した。
◇かゆみはなくても
白癬菌は皮膚の角質や爪のケラチン(たんぱく質の一種)を栄養にして繁殖する。主な感染経路は自宅の風呂や温泉などにある足ふきマットなど。菌が繁殖している角質がマットに落ち、家人らがこれを踏んで付着したまま長時間放置すると感染する。
足の爪にできた水虫「爪白癬」(提供=常深祐一郎教授)
常深教授は「温泉などに入ったら部屋で足を洗ってほしい。そのまま寝ると感染してしまう」と指摘し、普段から足を清潔に保つ習慣が大切だと強調した。
水虫は、角質層で増殖している間はかゆみがない。このため、治療を怠るケースがあるが、長期間放置すると白癬菌が爪に入り込み、爪白癬を発症する。その後も放置すると爪が分厚くなって変形、歩くと痛かったり、爪が切れなくなったりする。
白癬菌が拡散して臀部に生えたカビ(提供=常深祐一郎教授)
◇免疫が低下すると
白癬菌は通常、死んだ組織である角質層などから生きている皮膚に入ると免疫活動の影響で死滅するが、高齢者は注意が必要だ。常深教授は「爪白癬を放置していた高齢者の免疫力が弱くなると、お尻や背中などに菌が拡散する場合があります。老人ホームによっては、体にカビを生やしたした入所者が多数います」とした。
深刻な症状の懸念もある水虫は、足白癬の段階で治療しておきたいが、診断はやさしくない。「問診だけで水虫を湿疹などと見分けるのは専門医でも難しく、かなりの割合で外してしまいます」と常深教授。水虫の外用薬(塗り薬)を他の病気に使うと症状の悪化を招くことがあるため、皮膚科を受診して患部の組織を顕微鏡で検査、診断してから治療に入るよう促している。
常深祐一郎教授
◇爪の奥に入り込む
足白癬の治療は外用薬が中心となる。ただ、外用薬の治療期間は1年と長く、治癒率も20%程度。途中で治療をやめてしまう患者も多く、常深教授は「最終的な治癒率は数%しかない」と指摘する。爪白癬も爪の表皮や先端部にとどまっていれば塗り薬で治療できる。しかし、爪の裏側などに深く入り込んでいたりすると塗り薬は届かないため、血液を通じて病変部に薬を届ける内服薬(飲み薬)でないと完治しない。
かつての内服薬は半年程度の投与期間が必要だったが、2018年に出た新薬は投与期間が3カ月と短い。また、常深教授は「内服薬は肝臓が悪いと飲めないと思われているが、肝硬変といった重い肝臓疾患でない限り、ほとんどの人が服用できる」と強調し、内服薬を通じた完治を訴えた。(解説委員・舟橋良治)
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