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歌手で俳優の萩原健一さんが2019年3月、8年間にわたる闘病の末、68歳で亡くなった。病名は消化管間質腫瘍(GIST=ジスト)。胃や腸の筋肉層にできる悪性腫瘍だ。症状が表れにくいため早期発見は難しいとされるが、胃がん検診での異常をきっかけに早い段階で見つかる例も少なくない。
▽中高年に多いがん
山王病院(東京都港区)の清水伸幸副院長・消化器センター長によると、胃がんが胃の内壁表面を覆う粘膜から発生するのに対して、GISTは粘膜の下の筋肉層に発生する。ある種のタンパクの異常により、筋肉層にある特殊な細胞が異常に増殖して腫瘍となる。発生部位で多いのは胃で、約7割を占める。約2割が小腸で、残りが大腸、食道などだ。
罹患(りかん)率は10万人当たり1人程度で、発見時の年齢は「50~60歳代が多いですが、若い人もいます」と清水副院長は説明する。
▽完全切除で完治も
胃がんや大腸がんに比べて症状が表れにくく、あっても軽度のことが多い。症状は、食べ物がつかえる感じ、腹部の張りや腫瘤(りゅう)、黒色便(胃や腸からの出血による)などだが、どれもGISTに特徴的なものではない。また、腫瘍が粘膜表面ではなく粘膜下に発生するため、病変を直接観察したり、組織を採取したりするのが困難である。そのため早期発見が難しく、症状が出たときには進行していることも多いという。
ただし、「胃がん検診で粘膜の下に腫瘍が偶然見つかり、詳しい検査でGISTと分かる場合も少なくありません」と清水副院長。「検診をきちんと受け、異常を指摘されたら放置せず、精密検査も受けてほしい」と勧める。
治療の基本は、外科手術で病変を完全に取り切ること。「早期の段階で見つければ、手術でほぼ完治できます。傷口が小さくて、体への負担が少ない腹腔(ふくくう)鏡手術も可能です」
腫瘍が周囲の臓器にまで広がっていて切除できない場合や、手術後も再発するリスクがある場合には、イマチニブなどの分子標的薬というタイプの薬剤を用いて3年間治療する。清水副院長は「よく効く薬ですが高価です。ただ高額療養費制度を利用すれば、自己負担額は抑えられます」と話す。
診断と治療は、経験の豊富な施設で、専門医の下で受けることを勧める。GISTの診療を行っている病院は、国立がん研究センターの情報サイト「がん情報サービス」で調べることができる。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/09/28 08:00)
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