GIST〔じすと〕 家庭の医学

 GIST(gastrointestinal stromal tumor)は、胃や腸の壁に存在する間葉系(*)の細胞から発生する腫瘍です。以前は胃の筋組織から発生する「平滑筋肉腫」と考えられていましたが、その発生母地が必ずしも筋肉ではないことが判明したため、現在ではGISTと呼ばれています。GISTは内視鏡検査時に鉗子で押すと比較的かたい腫瘍として感じられるのが特徴であり、進行すると肝臓への転移や腹膜播種(はしゅ)転移をひき起こしますが、胃がんのようにリンパ節への転移は少なく、転移の様式が異なります。腫瘍が大きくなると頂部の粘膜に潰瘍が形成されることもあります。

 CT(コンピュータ断層撮影)検査や超音波内視鏡(EUS)検査では、腫瘍内部の不均一性や出血、壊死(えし)が確認される場合があり、これらの所見がみとめられた場合にはGISTの可能性が高いとされ、手術による切除が一般的です。GISTはリンパ節転移が少ないため、手術ではリンパ節郭清(かくせい)をおこなわない局所切除が一般的です。また、元来白血病治療薬として開発されたイマチニブがGISTの治療にも有効であることがわかり、現在ではスニチニブ、レゴラフェニブ、ピミテスピブといった分子標的治療薬も保険適用がみとめられており、進行例や再発例の治療選択肢をひろげています。

*からだの中には「上皮」と「間葉系」という2つの大きな分類があります。間葉系とは胃や腸の粘膜そのものではない線維や筋、血管細胞などを指します。

(執筆・監修:自治医科大学医学教育センター 医療人キャリア教育開発部門 特命教授/東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 准教授 菅野 武)
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