治療・予防

知っておきたい認知症のサイン 
生活の小さな変化に注意を

 離れて暮らす高齢の親が認知症になっていないかと心配する人は多いはず。たまに実家に帰ったら、どんなところに気を付ければよいのだろうか。和光病院(埼玉県和光市)の今井幸充院長は「以前はなかったような気になる様子が見られたら、認知症を疑ってください」と話す。

これまでできていたことが、できなくなっていたら要注意

 ▽物忘れには2種類

 認知症の初期症状といえば、まず「物忘れ」が思い浮かぶ。物忘れは、認知症によるものと、加齢に伴う正常なものを区別する必要がある。そのポイントは「体験したこと自体」を覚えているかどうかだ。認知症の人は体験自体を忘れてしまうため、「きょうのお昼ご飯は何?」と何度も聞くなど、同じ話を繰り返す。これは「エピソード記憶の障害」と呼ばれるものだ。

 ただ、物忘れがあっても、普段の生活に支障がなければ認知症とは診断されない。また、物忘れはごまかしたり、取り繕ったりもできる。「物忘れは認知症を疑う手掛かりにはなりますが、物忘れだけで判断することは難しい」と今井院長は言う。

 ▽ささいな変化を見逃さず

 そこで気を付けたいのが、「日常生活の変化」だ。さまざまな生活の場面でこれまでと違う様子が見られたら、重要なサインだという。例えば、きれい好きだったのに整理整頓をしなくなる、食事の支度ができなくなる、会話のつじつまが合わない、身なりに無頓着になる―など。

 さらに、他人の悪口ばかりを言う、出掛けることが好きだったのに外出しなくなる、かわいがっていた孫に冷たく当たるようになる―といった変化も起こる。「生活が変わり、『その人らしさ』が失われてきたら要注意です」と今井院長。たまに帰ったら、台所が整理整頓されているか、鍋が焦げていないか、汚れた洗濯物がたまっていないか、家の様子を確認するとよい。早期発見には、「前はこうだったのに」という家族の気付きが大切なのだ。

 もし、家族が少しでも生活上の変化を感じたら、年だから仕方ないで片付けず、かかりつけ医に相談し、きちんと検査を受けるよう促すこと。「早く発見できれば、薬で多少なりとも進行を抑えられるかもしれません。

 何より、認知症になっても安全に、安心して暮らせる生活環境をできるだけ早く整えてあげてください」と今井院長。しかし、家族にもそれぞれの生活がある。「介護の際は、自分たちですべてを背負い込まずに、専門の施設や地域のサービスを頼りましょう。親を気に掛け、親子関係を良好に保つことが家族の仕事です」と今井院長は強調している。(メディカルトリビューン=時事)

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