こちら診察室 膝の痛みと治療法の新たな選択肢

ヒアルロン酸注射はいつまで続けるべき?
~痛みが改善しなくなった場合~ 【第6回】

 「最初は痛みが和らいだのに、最近はあまり効果を感じられない…」。変形性膝関節症の初期治療として多くの方が受けるヒアルロン酸注射。保険適用で比較的手軽に受けられる治療法ですが、冒頭のようなお悩みを抱えている方も少なくありません。

 今回は、ヒアルロン酸注射の治療内容とその効果、新たな選択肢について、膝の専門医の視点から詳しく解説します。

 ◇ヒアルロン酸注射とは?

 ヒアルロン酸注射は、ヒアルロン酸ナトリウムという薬剤をひざ関節内に直接注入する治療です。

 ひざの関節内は「滑液(かつえき)」と呼ばれる液体が満たされており、これは関節がスムーズに動くための潤滑液の役割を果たしています。

 しかし、年齢とともにこの滑液に含まれるヒアルロン酸の量は減少し、結果として軟骨のすり減りや痛みが生じやすくなります。

 そこで、不足してしまった分を補う目的で注射を行い、一時的に関節のすべりを良くすることで、痛みの軽減や動作の改善を目指します。なお、日本整形外科学会の変形性膝関節症診療ガイドラインでも、ヒアルロン酸注射は変形性膝関節症の患者に対して一定の効果が期待できる治療法として位置付けられています[1]。

ヒアルロン酸注射は薬剤をひざ関節内に直接注入する治療(ひざ関節症クリニック作成)

ヒアルロン酸注射は薬剤をひざ関節内に直接注入する治療(ひざ関節症クリニック作成)

 ◇痛みを緩和する「対症療法」

 ヒアルロン酸注射は、変形性膝関節症に対する治療法の中でも、初期から進行期の段階で提案されることが多いですが、あくまで痛みを一時的に緩和するための「対症療法」です。

 1回の注射による効果の持続期間は通常1〜2週間ほどとされ、一定期間治療を続けることで症状が改善することもあります。しかし、治療を続けるうちに効果が薄れてきた、または効果が感じられなくなったという方も少なくありません。

 ◇メリットとデメリット

 ヒアルロン酸注射の最大のメリットは、身体への負担が比較的少なく、重篤な副作用の心配がほとんどない点です。感染症のリスクはごくまれにありますが、全身的な副作用はほとんどないため、初期治療として選ばれることが多い方法です。治療の流れとしては、通常、週1回の注射を5回ほど行い、その後、状態に応じて2〜4週間ごとのペースで続けていきます。

 一方で、デメリットとしては、あくまで痛みを和らげるための対症療法であり、根本的な治療ではないため、効果が一時的だったり、そもそもあまり効果を実感できなかったりする方もいらっしゃいます。また、注射そのものに多少の痛みを伴うため、これを不快に感じる方も少なくありません。

 ◇いつまで打ち続けるべき?

 ヒアルロン酸注射は定期的に続けることで、膝の痛みを緩和する効果がありますが、変形性膝関節症が進行していくと、注射だけでは痛みをコントロールできなくなることがあります。効果が感じられなくなった場合、注射を繰り返すのは効果的ではないため、次の治療法について検討するタイミングとなります。

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