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新型コロナウイルス感染症が世界的に猛威を振るい、日本でも緊急事態宣言が出されました。パンデミックを最初に経験した中国では「抑え込み」の成果が報じられ、湖北省武漢市の封鎖が解除されたものの、少数ながら新規感染者が確認され続けています。まだまだ予断を許さない状況と言えるでしょう。そんな「コロナ禍」を契機に中国で新たな医療関連サービスが普及しています。危機で生まれたチャンスをつかんだ企業の動きから、医療サービスの今後を考えてみたいと思います。
中国・武漢に設置された臨時病院で対応に当たる医療スタッフ(2020年02月14日)【EPA=時事】
◇不可欠な効率化
そもそも、中国では医療資源の不足と偏在が社会問題となっています。特に都市部の大病院は、受付と診察・支払い待ちの列が長い一方で診察時間は短い「三長一短」とやゆされる状態でした。そうした中、新型コロナ対策に多くの医療資源を割く必要に迫られ、結果的に医療の効率化を進めざるを得ない、という面があります。
不可欠となった効率化に寄与した企業を見てみましょう。
新興IT企業「依図」(上海市)は、上海公共衛生臨床センターの依頼で新型コロナ肺炎のAI(人工知能)画像診断システムを開発。肉眼で5~15分かかっていた胸部CT画像の読影を数秒まで短縮しました。3月30日付鳳凰ニュース等の報道によれば、湖北省武漢市の病院との提携があった縁もあり、依図は同省内の30超の病院に同システムを納入しています。
◇診断基準に認める
2月5日に中国国家衛生健康委員会は「新型コロナウイルス肺炎診療ガイドライン(試行第5版)」で、湖北省に限って胸部CT画像の読影結果を診断基準として認めました。これは、同システム導入により正確かつ効率的な診断が実現され、CT画像の読影を診断フローに組み込めた成果だと言われています。
医療サービス効率化に寄与した企業の例(各種報道・公開情報に基づき筆者作成)
中国IT大手「アリババ」グループ傘下の「DAMOアカデミー」が主導して開発したAI画像診断システムは既に中国国内の170近い病院に導入されており、3月27日には「日本ブレーン社」が同システムをベースにした国内向けサービスの提供を発表しました。
この他にも「商湯科技」(北京市)や「科大訊飛」(安徽省合肥市)など複数の新興IT企業が新型コロナ肺炎に関連するAI画像診断システムを臨床現場に導入済みと報じられています。
◇医療行為以外にも
直接の医療行為以外でも効率化が進みました。院内感染リスク低減を目的とした単純作業へのロボット導入です。
「*金に太*米機器人」(上海市)の院内消毒ロボットが湖北省を中心に全国で約60台導入されたのをはじめ、「普渡科技」(深セン市)は隔離病棟向けに食事や生活・医療用品を運ぶ配送ロボットを100を超える病院へ導入。「擎朗科技」(上海市)も同じく食事配送ロボットを約50の病院に100台程度導入した、とIT関連専門ニュースサイトである億欧ニュースが3月12日付で各ロボットメーカーの動向を報じています。
◇オンライン・プラットフォームが存在感
「患者と医師/医療の関係」に変化をもたらす改革も進んでいます。特に注目すべきは、医療サービスのオンライン・プラットフォーム化でしょう。
1月31日に正式に運営を開始した「上海新冠肺炎公共服務平台(上海・新型コロナウイルス肺炎関連公共サービスプラットフォーム)」が、その代表例です。
海外や他都市から上海市に入った人々の健康状態を登録するプラットフォームとして投入されましたが、上海市内の公共サービス窓口への「通行証」としての機能も追加されました。
(2020/05/07 09:00)
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