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新型コロナウイルスは、医学生の「就活」にも影響を及ぼしている。卒業後の臨床研修病院の志望先を決めるための病院見学が相次いで中止となるなど、情報収集に支障が生じているためだ。こうした中、「病院側のリアルな情報を聞きたい」という医学生のニーズに応え、医学生団体が病院関係者を招いてオンライン説明会を開催する動きもある。
6月下旬、三井記念病院(東京都千代田区)の教育研修担当者や研修医らを招いて開かれた説明会には、60人を超える医学生が全国から参加。多くの質問が飛び交い、盛り上がりを見せた。(文・構成 伊藤春花、稲垣麻里子)
◇コロナ禍で見学中止相次いで企画
医学生は6年生になり、例年2月に行われる国家試験に合格して卒業すると、研修病院での2年間の臨床研修が必修となっている。多くの場合、5年生のうちから研修病院の情報収集のために病院訪問を始める。
2004年に新医師臨床研修制度がスタートし、医学生は出身大学にとらわれることなく、研修先を自由に選択することが可能となった。学生のうちに自分が将来やりたいことやライフスタイル、医師像をイメージしながら、6年生の春までに目星を付けた病院を見学し、夏に研修先の採用試験に臨むのが一般的だ。
各病院の研修医採用人数は決まっており、医学生は志望した複数の病院の中から、研修プログラムの内容、病院の雰囲気、給与待遇などにより、行きたい病院を絞り込んで優先順位を付ける。一方の病院側も、採用したい学生を順位付けする。ここで最終的に両者の組み合わせを決めるのが「研修医マッチング」だ。
医学生、病院の双方が、医師臨床研修マッチング協議会(日本医師会、全国医学部長病院長会議など4団体で構成)のシステムに志望先や採用希望の情報を登録。コンピューターが一定の規則(アルゴリズム)に従ってマッチングを決定する仕組みになっている。
◇ゲストの研修担当者と研修医に多くの質問
こうした事情を背景として、病院見学の中止に、医学生は情報不足への不安を募らせたという。メドキャリのメンバーで順天堂大医学部5年の吉富桜嘉さんは「コロナ禍により、予定されていた病院見学はほぼ中止。オンラインで説明会を開催する病院も増えてきたが、事務的な内容が多く、学生たちは必要な情報が入手しづらい」とした上で、医学生が主体となったオンライン説明会では「よりリアルな情報を入手できる」と説明する。
今回のオンライン説明会では、メドキャリのメンバー2人が司会進行役を担当。ゲストとして招いた三井記念病院の教育研修担当者が病院の基本情報や研修プログラム、採用基準などについて説明し、研修医2人が研修の実際や病院の雰囲気などを伝えた。進行役は、医学生から事前に集めた質問をぶつけて「本音」を引き出すよう努め、「実際の研修の様子がイメージできた」と話していた。
■医師臨床研修マッチング■
2004年の新医師臨床研修制度の開始と同時に導入したシステムで、2019年の参加者は1万75人、参加病院は1020病院(募集定員1万1109人)。研修希望者の行きたい病院の登録は平均して約3件程度。第1希望でマッチした人は全体の73・7%と高い。
マッチングが始まる以前、研修医は出身大学で研修を受け、大学病院から提携の市中病院に派遣されるのが一般的で、地方の大学を出た研修医はその地方にとどまることが多かった。現制度では、研修医が都市部や有名病院に集中する医師の偏在問題も顕在化し、都道府県別の募集定員の上限を設けるなどの対策も取られている。
(2020/07/20 07:00)
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