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「慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)」は、手足の末梢(まっしょう)神経に障害が起こり、左右対称に手足がしびれたり、力が入らなくなったりする。免疫システムが誤って自身の神経を攻撃することで起こると考えられている。まれな神経の病気で、国の難病にも指定されているが、千葉大学医学部付属病院脳神経内科の桑原聡科長は「有効な治療法はあり、適切な治療を受ければ社会復帰も果たせます」と話す。
筋力の低下や感覚障害により、さまざまな症状が出現
▽神経覆う膜が壊れる
脊髄から出て枝分かれして全身を巡る末梢神経は、脳からの命令を手足に伝えたり、自律神経を制御したりする。末梢神経を電線に例えると、銅線に当たる神経を、電気が漏れないように髄鞘(ずいしょう)と呼ばれる膜が覆っている。髄鞘が壊れることを「脱髄」というが、CIDPでは自分の免疫システムが誤って作動することによってこれが起こり、脳からの命令がうまく伝わらなくなると考えられている。
国内のCIDP患者数は3千~5千人と推定される。男性にやや多く、年代は子どもから高齢者まで幅広い。主な症状は、しびれ、力が入らず歩けない、腕が上がらない、箸が使いにくいなど。症状は表れてから2カ月以上かけて徐々に進行し、回復しても再び表れるのが特徴だ。
診断には、皮膚上から神経を電気で刺激し、刺激が神経を伝わる速度(伝導速度)を測る末梢神経伝導検査を行い、速度が遅ければ脱髄を疑う。磁気共鳴画像装置(MRI)検査や超音波検査で神経が腫れた所見も決め手となる。CIDPが疑われたら、さらに詳しい検査を受ける。「CIDPが一般に知られるようになったのはごく最近です。正しい診断のためにも、まずはこの病気について知ってください」と桑原科長。
▽三つの治療法
治療法は主に三つ。異常な免疫反応を抑える「ステロイド療法」と、血液をいったん体外に取り出して、症状を引き起こす血液中の原因物質を分離し除去した後に体内に戻す「血漿(けっしょう)交換療法」、点滴薬を静脈内に投与する「免疫グロブリン療法」だ。これらの有効性に大きな差はないが、最も新しい免疫グロブリン療法は、副作用が少なく、投与が簡便なため患者の負担も少ない治療として注目されている。
症状が治まる寛解に達した後も、再発と進行を抑えるため維持療法を行う。免疫グロブリン療法の維持療法には皮下注射剤があり、自宅に居ながら自分で注射を打つことができる。患者の多くは維持療法を半年ほど続けた後、いったん治療を止める。そのままずっと再発しない人もいれば、2~3カ月で再発する人もいるという。桑原科長は「CIDPの患者さんは、三つの治療法のいずれかに反応することが多いです。社会復帰を目指すには、患者さんに合った治療を受けることが大切です」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/08/31 09:00)
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