新米医師こーたの駆け出しクリニック

腰痛が治ったら歩こう
~再発防ぐ新常識~ 内科専門医・渡邉昂汰

 腰痛になったことがある人は多いと思います。内科外来を担当していると、患者さんに運動を勧める機会は多々ありますが、「昔ぎっくり腰をやったから、運動は怖くてね」と話す方もいました。そう言われると、「内科疾患を良くすることも大事だけど、腰は取り返しがつかなくなるかもしれないから、無理はしないでおきましょう」となりがちでした。果たしてこれは最善の選択なのでしょうか。

ウオーキングは腰痛の再発リスクを低下させる

ウオーキングは腰痛の再発リスクを低下させる

 ◇リスク低減に有効か

 上記の疑問を抱くきっかけになったのが、2024年に発表されたWalkBack試験です。これはオーストラリアで行われた研究で、腰痛の再発予防としてウオーキングと教育プログラムが行われ、その有効性が検証されました。腰痛から回復した成人701人が参加し、半数がウオーキング群、残りが通常ケア群に分けられました。

 1年間の追跡調査の結果、ウオーキング群では腰痛の再発リスクが28%も低下しており、特に重度の腰痛の発症が少ないという結果でした。

 運動の重要性を再認識

 ただし、いくつかの注意点もあります。まず、研究期間が1年程度と比較的短期間です。また、参加者の大半が比較的健康でモチベーションの高い層だったことが、結果に影響している可能性があります。それでも、ウオーキングというシンプルな対応で、これだけの効果を得られた意義は大きいと言えるでしょう。

 このように、「腰痛になったからこそウオーキングを始める」というのは、意外にも理にかなっているのです。運動にはがんや心臓病予防など、たくさんの効果があります。運動習慣がなかった人にとっては、むしろよいきっかけとなるかもしれません。

 この研究結果をもとに、これからは私も「無理しないように」と言うのではなく、「少しずつでも歩いてみましょう」と、より前向きな運動指導を行っていこうと考えています。(了)

渡邉昂汰氏

渡邉昂汰氏


 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専門医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。



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