治療・予防

健康や老化を左右
腸内フローラって?

 腸内には多くの種類の細菌がすみ、それが集まって構成される環境を「腸内フローラ」と呼ぶ。「フローラとはお花畑のことで、肥満や老化、病気などと関係していることが分かってきました」と、京都府立医科大学付属病院(京都市)消化器内科の内藤裕二准教授は話す。

 ◇100兆個の腸内細菌

 人間の腸内には乳酸菌やビフィズス菌など健康維持に役立つものや、体調が優れないときに悪さをする大腸菌など、何百種類もの細菌が存在している。その数は100兆個にも及ぶとされ、人により構成している菌の種類やバランスは異なる。私たちは固有の「お花畑」を、おなかの中に持っているのだ。
 腸内細菌は食べた物を分解して栄養にすると同時に、さまざまな物質を出す。例えば、バクテロイデスという細菌は、腸粘膜のエネルギー源となる一方でインスリンの分泌量にも影響を及ぼす短鎖脂肪酸を出している。
 短鎖脂肪酸は余分な脂肪の蓄積を抑え、燃焼させる働きもあるので肥満を防ぐ。「太っている人の腸内には短鎖脂肪酸が少ないことも、腸内フローラの研究で分かってきました」と内藤准教授は言う。
 豆腐や納豆などに含まれるイソフラボンをエクオールという物質に変える細菌もいる。「エクオールは女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをします。閉経後の女性の肌のしわの改善や骨粗しょう症に対し有効という報告があります」

 ◇鍵は食物繊維

 腸内フローラは遺伝的な影響を受けやすいが、妊娠中の母親の栄養状態や、帝王切開か自然分娩(ぶんべん)か、ビフィズス菌などを含み、免疫を高める母乳による育児期間なども関係するという。その後に始まる離乳食の内容、生活習慣なども影響し、腸内フローラのおおよその構成は5~7歳で決まる。
 一度構成された腸内フローラを変えるのには時間がかかるが、食事や生活習慣などで改善が期待できる。キーポイントは食物繊維だ。大腸まで運ばれた食物繊維が腸内細菌の活動を活発にすると、短鎖脂肪酸が分泌され、腸管の炎症を抑制し、脳の視床下部を刺激して食欲を抑える。
 「腸内の健康は体の健康につながります。食物繊維を積極的に摂取し、運動を心掛けてください」と内藤准教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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