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2020年末からの新型コロナウイルス感染症の感染者急増を受けて発令された緊急事態宣言は、最後まで延期されていた首都圏の1都3県でもようやく解除された。しかし、解除直後から、これまで感染者数が少なかった地方でも急増が報告され、一部の県は独自の緊急事態宣言を発出している。大阪府、兵庫県、宮城県では感染者の急増を受け、「まん延防止等重点措置」の初適用が決まった。それでも専門家からは「一刻も早く次の対策を打ち出すべきだ」との声が上がっている。
新年度が始まった4月1日、東京・丸の内のオフィス街に向かう会社員ら
◇全国的大流行、一歩手前の状態
「東京都で1日1000人以上の新規感染者を出した20年冬からの流行のピークは、少し発出が遅れたとはいえ、緊急事態宣言によって同300人前後まで抑え込めた」。日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大学教授は、飲食店の営業時間短縮に力点を置いた今回の緊急事態宣言の効果を指摘した上で、20年春に比べて解除時の感染者数が多い点を踏まえ、「現在の感染者数が次の感染が広まる際のスタートラインになることを考えれば、感染者数の抑え込みが一層重要な課題になる」と話す。
日々の新規感染者数は現在、20年末のピーク時からは大きく減少したが、20年春の緊急事態宣言解除時の1~2桁台を大幅に上回っている。舘田教授は「現在の感染者数は、ちょっとした感染拡大で大流行を引き起こす一歩手前の状態だ。できるだけ早く、次の対策を打って、特に首都圏、近畿、中京の3大都市圏の感染者数を早めに抑え込まないと、流行の『第4波』がいつ来ても不思議はない」という。
舘田一博・日本感染症学会理事長
◇「ステージ3」を指標に
感染者数の指標となるのは、「人口10万人当たりの1日の新規感染者15人」。感染状況を示す「ステージ1~4」のうち、感染者の急増などを示す「3」に相当する指標で、感染が広まると、比較的早めに状況を反映するとされている。舘田教授は「検査数などによって感染者数は変化するので、1週間ごとの1日当たりの平均数で評価すればよい。例えば、東京であれば、週平均で1日当たりの感染者が500人を超えるかが目安になる」とする。
舘田教授は、対策のスピード感を重視する。決定に時間がかかれば、その間に感染が拡大する恐れもある。さらに、どのような対策を取るかが事前に流れると、対策による市民へのインパクトを弱めてしまうからだ。「法的な強制力が弱い日本では、『対策が出た』『大変だ』と市民に感じてもらうことで行動変容を促すことが、大きな意味を持っている。そのためには、間髪を入れずに対策を出すことが望ましい」と、舘田教授は説明する。
仕切り板が設置された飲食店のカウンター=東京都内
◇地域限定で営業自粛
具体的には、都道府県単位でステージ3を超す感染者が出た場合、事前の規定に従って、対策が「自動的」に取られることが望ましいという。このため、前回までの緊急事態宣言の教訓から、クラスターが発生しやすい歓楽街などを対象に「新宿歌舞伎町」や「渋谷センター街周辺」といったように地域を限定し、接待を伴う飲食業や酒類を提供する飲食店など、業態を絞って営業を自粛してもらうという方式を提案している。
「ただし、これらの地域はあくまでも例示で、歓楽街以外も含める必要はある。また、休業してもらう店に対し、前年度の経営実績に応じた十分な補償をすることも欠かせない」と、舘田教授は話す。そうすれば、リスクの高い業態に影響を限定した上で、「客側」へ強いインパクトを与えることができるからだ。
「1回目と2回目の緊急事態宣言の結果を比較すれば、感染拡大のリスクを高める点では飲食業が突出していることが分かった。ただ、飲食店すべてを長期間閉めることは、経済的にも個人の生活上でも無理がある。テーブルやカウンターなどへのアクリル板・仕切り板の設置、入店客数の制限など、有効な対策も見えてきたので、ある程度ルールを守れば、飲食店すべてを規制する必要もないのではないか」。舘田教授はその上で、「これ以上大きな感染の波をつくってはいけない。早め早めに、行政、医療、市民が一体になって対応していくことが重要だ」と強調する。(了)
(2021/04/03 05:00)
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