歯周病が誤嚥性肺炎の原因に
高齢者に多く、口腔ケアで予防(日本歯科大学生命歯学部 沼部幸博教授)
高齢者の死因の上位である誤嚥(ごえん)性肺炎。その発症に歯周病が深く関係することが知られている。日本歯科大学生命歯学部(東京都千代田区)の沼部幸博教授は、「口の中を清潔にして歯周病菌などの細菌を減らすことが誤嚥性肺炎の予防につながります」と話す。
嚥下おでこ体操
▽高齢者に多い誤嚥
食べ物や唾液を飲み込む際、口から食道へと送られるが、誤って気管に入り込んでしまうのが「誤嚥」だ。高齢になるとうまく飲み込めない嚥下障害が起こりやすく、誤嚥を生じるリスクが高まる。
通常は誤嚥しそうになると嚥下反射が働き、むせてせきをすることで気管から異物を吐き出す。しかし、加齢とともに飲み込む機能や嚥下反射が低下すると、高齢者ではうまく吐き出せない場合がある。
さらに、口の中には肺炎を引き起こす細菌を含むさまざまな細菌がすみついており、歯磨きが不十分で不潔な状態が作られると増殖する。「誤嚥によって肺炎の病原菌を多く含んだ食べ物や唾液が気管に入り、気管から肺に侵入して炎症を起こします。これが誤嚥性肺炎です」と沼部教授は説明する。
特に歯周病があると誤嚥性肺炎のリスクが高くなる。その理由について、「歯周病菌は肺炎の原因菌と一緒に気管を通り、肺炎の原因菌などが気管支や肺の粘膜にすみつくのを助けるよう働くのです」と沼部教授。また、歯周病を起こしている歯茎は炎症性物質を放出するため、これが唾液などに混じって気管支や肺に入り込むと肺炎を悪化させるのだという。
▽半年に1度の検診を
誤嚥性肺炎の発症を防ぐには、歯磨きなどによる口腔(こうくう)ケアで肺炎の原因菌や歯周病菌を減らし、口の中を清潔に保つことが重要となる。
口腔ケアの基本は、歯ブラシ、歯間ブラシ、舌の専用ブラシなどを用いて、細菌を取り除くこと。歯並びや歯茎の状態によって磨き方も異なるため、歯科医院で指導を受けるとよい。入れ歯にも細菌が繁殖するため、毎日の洗浄が欠かせない。
歯周病の多くは自覚症状がなく進行する。そのため、定期的に歯科医を受診して、歯と歯茎の状態をチェックしてもらうとよい。機械による歯面・歯間清掃など専門的な口腔ケアを受けることも望ましい。
また、日頃から喉の筋力を鍛える体操(嚥下おでこ体操などがある)を行って、嚥下機能を維持することが勧められる。沼部教授は「かかりつけ歯科医を見つけ、半年に1回程度、検診を受けるとよいでしょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/03/26 05:00)
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