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周産期医療の進歩に伴い、妊娠・出産で母親が亡くなるケースは大幅に減少している。「出産は危険なものではない」と考える人も少なくないが、現在も妊産婦死亡は年間50件前後あり、出産年齢の高齢化に伴うリスクも懸念されている。妊産婦の健康について、神奈川県立こども医療センター(横浜市)産婦人科の石川浩史部長に聞いた。
◇妊産婦死亡の現状
妊産婦の死亡数は、全世界で1年に30万人程度だが、国内では7100人超だった1920年代初頭をピークに減少を続けている。2010年代以降の妊産婦死亡率は世界トップクラスの低さだが、近年は横ばいで毎年一定数存在する。
日本産婦人科医会の調査によると、14年に起きた妊産婦死亡の原因の1位は子宮からの出血(産科危機的出血)で、うち子宮型羊水塞栓症と弛緩(しかん)出血で半数以上を占める。子宮型羊水塞栓症は原因不明だが、母体の血液へ羊水成分が流入し、大量出血を引き起こすと言われている。
弛緩出血は何らかの理由で出産直後に子宮が収縮せず、大量出血に至るものだ。出産直後に薬を投与し、子宮収縮を促す方法が普及しているが、完全に防ぐことはできない。また、子宮型羊水塞栓症は予防法もなく、発症時は弛緩出血と区別がつきにくく、治療は迅速な輸血が最も重要となる。
「現在のところ事前の予測はできません。どのような医療機関であっても、必要なときに迅速に輸血できる血液が届くような医療体制の整備が望ましいのですが、時間がかかる地域もあるのが現実です」と石川部長は解説する。
(2017/05/30 10:54)
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