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人と飲食する会食の場を、緊張するから苦手だと感じる人はいるだろうが、「会食恐怖症」の悩みはもっと深刻で、社会生活にも支障を来す。「会食を理由に仕事をやめてしまう人もいます。気の持ちようで治る病気ではありません。心理療法と薬物治療の正しい併用が効果的です」と、はるの・こころみクリニックの田島治院長は治療を勧める。
会食の場で極度の恐れを感じる
◇社交不安症の一種
会食恐怖症は、不安症の一種である社交不安症に分類される病気だ。社交不安症は、人前で恥ずかしい思いをすることに極度の恐れを感じ、その不安が予期される場面を避けてしまう病気で、会食という限定的な場面でそれが起きるのが会食恐怖症だ。
発症のメカニズムについて、田島院長は「生真面目で不安を感じやすい性質が素因となる傾向があり、小学校高学年や中学生の頃に、給食やクラブ活動での食事の際、完食できなくて叱られた、急に気持ちが悪くなったなどの経験をすると、恐怖の条件付けが起きます。すると、同じような場面に出合ったとき、全部食べなければ駄目だ、また叱られる、食べると吐くかもしれないという過度な思い込みを自動思考するようになります」と説明する。
このとき脳内では、恐怖感情に深く関わるへんとう体が過敏に反応して、先々の会食の予定が入っただけで不安を感じ、それが強いと、行かないという回避行動を取るようになる。
◇過敏さ取り除く治療
「治療は、脳と心の過敏さを取り除くことが目的です」田島院長は、心理療法で、苦手な状況に徐々に慣れる練習をするエクスポージャーという方法を用いる。薬物治療では、抗うつ薬の一種、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を使用する。
「医師によっては、吐き気止めや抗不安薬を出しますが、これらには習慣性や依存性があります。SSRIの使用でセロトニンの働きを高められれば、神経の過敏さを抑えられることが分かっています。年単位で続ける必要はありますが、自信が付いて過敏さが取り除かれれば、薬物治療もやめられます」
本人が周囲の理解を得るには「病名を打ち明けるより、『緊張するとあまり食べられないんだ』と軽く伝えるといいでしょう」とアドバイスしている。
日本会食恐怖症克服支援協会(https://kaishoku.or.jp)では、情報発信や個別相談、当事者の集まりなどを通じて、症状に悩む人のための支援活動を行っている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/02/26 05:00)
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